5月 18, 2023

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電源の設計では、効率とサイズの2つが主要な考慮事項ですが、力率改善(PFC)もますます重要になっています。PFCは、電源ライン上の高調波含有量や無効電力による損失を低減して、AC主電源インフラストラクチャに対する電源動作の影響を最小限に抑える必要があります。ただし、PFCを含め、設置面積が小さく効率が高い電源を設計するのは簡単ではありません。本ブログでは、従来のPFCトポロジを改良して、この設計を実現できる方法を紹介します。

 

整流器とブーストダイオードを使用したPFC

電源の入力段には、一般的にブリッジ整流器およびその後に4個の整流ダイオードと1個のブーストダイオードで構成される単相PFC段が使用されています。


Bridge Rectifier followed by a single-phase PFC stage
Bridge Rectifier followed by a single-phase PFC stage

図1:ブリッジ整流器と後段の単相PFC段

 

トーテムポールトポロジ

電源の効率向上に使用できる別の方法は、ブリッジ整流器を取り除いて、ブーストダイオードを高速スイッチングMOSFETに置き換えたトーテムポールトポロジを使用することです。これをどのように行うかを理解するには、まずこのトポロジを、入力正弦波形の半サイクルごとに1つずつ、2つの別々のブースト回路の機能を組み合わせたものと考えるのがよいでしょう。

インダクタ、コンデンサ、MOSFET S1、ダイオード(S2)は正の半サイクルでは、正のブースト回路として動作します。さらに、起動時または異常動作条件でのインダクタの飽和を防止するためにバイパスダイオード、そして負の半サイクル中の動作を防止するために保護ダイオード(SR1)が使用されています。


図2:正のブースト回路

 

負の半サイクルでは、インダクタ、コンデンサ、MOSFET S2、ダイオード(S1)が、オン状態の電流経路に保護ダイオードSR2を追加した、標準的なブースト回路の反転バージョンを形成します。


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図3:負のブースト回路

 

トーテムポールPFCトポロジでは、2つのダイオード(SR1とSR2)をMOSFETに置き換えることで、より高い効率を達成できます。その理由は、これらのダイオードはトーテムポールの動作中は導通しますが、50/60 Hzのみでスイッチングするためです。バイパスダイオードは起動時にしか導通しないので、MOSFETに置き換えるメリットはありません。


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図4: ダイオードを使用したトーテムポールPFC回路

 

改良されたトーテムポール

改良されたトーテムポールPFCトポロジでは、高速SiC MOSFETと低速スーパージャンクションMOSFETの組み合わせを使用しています。正の半波の間、SR1が全サイクルの間オンになり、非同期ブースト回路にグランドパスを供給します。S1はブーストスイッチとして働き、S2は非同期ブーストのダイオードとして機能します。同様に、負の半サイクルの間、SR2がグランドパスとなり、S2はブーストスイッチ、S1は非同期ブーストのダイオードとして機能します。SR1とSR2は低速スーパージャンクションMOSFETに置き換えることができます(低周波数でのスイッチングしか要求されないため)。潜在的なEMI問題を防止するために、急速なゼロクロス遷移が発生しないように、コンデンサを追加する必要があります。ただし、コンデンサの値が大きすぎると、全高調波歪み(THD)性能が低下します。高電力密度が必要な場合は、S1とS2をSiCデバイスにすることができます。 


図5: SiCとスーパージャンクションMOSFETを使用した改良トーテムポールPFC回路

 

高電力密度を持つ高効率電源の構築

オンセミは、EliteSiCスイッチを備えた高周波PFCフロントエンド、先進のトーテムポールPFCコントローラ、そして出力段に高速同期整流を使用し最大150 kHzで動作する高周波LLC段を使用して、40 W/in3を超える電力密度と全負荷効率98.4%を達成した単相AC入力3 kW PFC電源を設計しました。この革新的ソリューションの動作と性能は、こちらでダウンロードできるホワイトペーパーで詳しく説明しています。