6月 21, 2023

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オンセミは最近、EliteパワーシミュレータおよびセルフサービスPLECSモデルジェネレータ(SSPMG)をリリースしました。EliteパワーシミュレータはPLECSでドライブされ、便利なオンライン環境でお客様に提供されます。Eliteパワーシミュレータは、いくつかの新しい機能と現在の業界における最先端技術を超える利点を備えています。SSPMGは、PLECSシミュレーションで使用されるモデルの柔軟性と確度を実現する、業界の画期的なツールです。図1に示す体系的フローの中でこの2つのツールを使用すると、初めてのお客様でもオンセミEliteSiC製品を組み込んだ適切なパワーアプリケーションを設計できます。

 

 

  1EliteパワーシミュレータとセルフサービスPLECSモデルジェネレータの選択方法

 

PLECSモデルは、損失ルックアップテーブル(メーカーのデータシートに基づく)とCauerまたはFosterと同等のネットワーク形式のサーマルチェーンで構成されます。シミュレーション中に、PLECSはこれらの損失テーブルに基づいて内挿または外挿(あるいはその両方)を実行し、回路動作におけるバイアスポイントの導通損失とスイッチング損失を取得します。

スイッチング損失を測定する従来の方法はダブルパルステスタの使用です。オンセミの高度なダブルパルステスタは、寄生成分の影響を最小限に抑えて、最小(またはデバイス)損失を測定できるため、さまざまなダイサイズ、RDS(ON)値、パッケージ間の比較が可能になります。ただし、お客様が実際のアプリケーションで損失を評価する場合、データシートの損失値は観察した損失を反映していません。さらに考察を行うと、データシートに基づくPLECSモデルは、エンドユーザーのアプリケーションを代表するものではないことが明らかになります。お客様はコストと性能の間で妥協する必要があるため、オンセミのダブルパルステスタで使用されているものより特性が劣るインダクタやコンデンサを選択することになります。ユーザーのアプリケーションに、メーカーのデータシートのダブルパルステスト環境と同じ寄生環境がある場合にのみ、メーカー提供の標準PLECSモデルでシミュレートすることに意味があります。 

実際の損失を評価する適切な方法は、お客様に実際のボードとコンポーネント(インダクタやコンデンサなど)の寄生成分をダブルパルステスタのセットアップに導入し、カスタマアプリケーション独自のものにすることです。これは測定では克服できない可能性があるため、オンセミはSSPMGを導入して、お客様が仮想プロトタイピング環境でのアプリケーション環境に基づいて独自のPLECSモデルを設計できるようにしました。どのような仮想シミュレーションベース環境でも、基礎となるモデルが必要であり、オンセミの高確度の物理ベースモデルは、お客様がハイファイPLECSモデルを実現するのに信頼できるSSPMGエンジンです。

SSPMGには、図2に示すように、お客様の実環境を反映し、ディスクリートSiC MOSFETおよびSiCベースパワーモジュールの損失を抽出するための、ダブルパルステスタシミュレーション回路調整用パラメータが30以上あります。

 

 

2SSPMGディスクリート製品ダブルパルステスタの回路図

 

これらのパラメータは、アプリケーションの特定のケースとステージを反映して調整されます。シミュレーションを向上させるために、ゲートドライブ電圧もカスタマイズできます。お客様は、損失テーブルのバイアスポイントと温度ポイントの境界と密度を設定することもできます。ラボ環境で測定できるデータポイント数には制限があり、通常はデータシートで提供されます。仮想SSPMG環境を通じて、データポイント数の制限がなくなり、シミュレーション中にPLECSによる正確な内挿と外挿が実行されます(図3)。しかし、古典的なダブルパルステスタはハードスイッチング時にのみ有効であるため、ソフトスイッチング動作中に発生する損失を生成することはできません。ソフトスイッチング手法(LLC、CLLCなどの完全共振段、またはフルブリッジ位相シフトやデュアルアクティブブリッジなどの遷移共振段を含む)を使用する場合、スイッチングイベントが発生する前に十分な共振エネルギーが存在すれば、ソフトスイッチングを達成できます。そうでない場合、エネルギーが必要量より少なければ、部分ソフトスイッチングを達成できます。共振エネルギーが存在しない場合はハードスイッチングが発生します。新しいオンセミEliteパワーシミュレータおよびSSPMGで、ソフトスイッチングに有効なPLECSモデルを含めるには、古典的なダブルパルステスタに若干の変更を加え、スイッチングイベントが発生したときに共振インダクタエネルギーをキャプチャするための追加パラメータ(dI/dt、デッドタイム、インダクタ値など)を含めます。

 

  

3:セルフサービスPLECSモデルジェネレータ - 高密度損失テーブル

 

 さらに、お客様は製造時における固有の半導体プロセス変動に対するアプリケーションの堅牢性(データシートの限界値など)を研究することができます。SSPMGでは、図4に示すように、お客様は導通損失とスイッチング損失について、代表的コーナー条件と相関的コーナー条件に合わせて独自のPLECSモデルを設計できます。

 

 

4:セルフサービスPLECSモデルジェネレータの特徴 - コーナーモデル

 

お客様は、SSPMGで設計したPLECSモデルをスタンドアロンPLECS設計環境にダウンロードしたり、図5に示すようにデバイス構成ステップでEliteパワーシミュレータに直接アップロードしたりすることができ、かつてないほどの柔軟性が得られます。

 

 

5EliteパワーシミュレータへのカスタムPLECSモデルのアップロード

 

オンセミは、新しいEliteパワーシミュレータとSSPMGの技術的な利点に注目したアプリケーションノートを作成しました。回路レベルの詳細について、特に動作波形や損失が寄生成分によってどのような影響を受けるかなど、多くの情報が記載されています。