電力需要はネットワークの拡大により大幅に増加しています。イーサネットは、既に技術のエコシステムに不可欠です。現在の Power over Ethernet (PoE) 世界共通の規格(IEEE 802.bt) は、最大 90 ワット(W)の電力を提供することができ、多くの新しいアプリケーションの実現につながっています。オン・セミコンダクターの PoE 受電 (PD)ソリューションは、新しい電力制限をサポートしており、最大では 100W に広げます。これにより、設計の柔軟性、コスト効率性、およびエネルギー効率性が可能となり、コネクテッド照明および電気通信を含むアプリケーションにおける高い電力需要に対応できます。
PoE IEEE 802.3bt とは?
PoE は、IEEE 802.3af および 802.3at 規格で定義されているネットワーク機能の1つです。PoE 技術では、電力とデータをイーサネットケーブルで伝送できます。伝送されるデータの量は、給電(PSE) と受電(PD)との接続を介して管理されます。このプロセスにおいて PSE は、PoE 規格に基づく PD デバイスの種類とクラスを認識し、適切かつ安全な量の電力を受け取るように対処します。
また、最新の PoE 統一規格 (IEEE 802.3bt)は「PoE 2」とも呼ばれ、2018 年 9 月に批准されました。既存の規格と下位互換性がありますが、下記の2つの点で異なります。
- PoE ケーブルの 4 ペアの配線をすべて使用することにより、PSEの出力電力を増加
- デバイスの 2 つの新しい種類(3 および 4)と 4 つの新しいクラス(5 ~ 8)を認識することにより、エネルギー効率を向上
規格 | PSE 出力電力 | PD 入力電力 | アプリケーションで 利用可能な電力 (85% の効率性) |
802.3af (PoE) | 15.4 W | 13 W | 11 W |
802.3at (PoE+) | 30 W | 25.5 W | 21.6 W |
802.3bt (PoE 2) | 90 W | 71.3 to 90 W | 21.6 W to 76.5 W |
PoE-PDソリューション
エネルギーコストの上昇、小規模ソリューションの需要、複数規格への準拠、および予算の制約があいまって、アプリケーション設計者は、多くの課題に直面しています。
オン・セミコンダクターは、独自の高電圧向け製造プロセスを使用して、高い効率性と低い発熱で動作する、より先進の電力変換用の半導体を開発しました。
PoE に関しては多くの誤解があります。設計で PoE の利用を躊躇させる一般的な神話を以下のビデオで紹介しています!
引き続き本シリーズのパート2を視聴
GreenBridge 2™ Quad MOSFET
PD へ給電する PSE に無停電電源装置(UPS)が備わっている場合、PoE アプリケーションにおける PD は、入力電力の極性を制御するブリッジ回路が必要です。単純なダイオードブリッジ設計は、それに対する最も人気の高いアプローチであり、信頼性のある低コストソリューションを実現します。ただし、PD はより多くの電力を必要とするため、順電圧降下によるダイオードブリッジの伝導損は、効率的に解決すべき重要な課題の1つとなります。オン・セミコンダクターの GreenBridge ソリューションは、ブリッジ回路における電力損を減らすことにより、この問題に対処するために開発されました。
FDMQ8203 GreenBridge ソリューションに基づく設計に必要なことは、MOSFET を駆動および保護するための外部回路の追加だけです。テストしたところ、GreenBridge ソリューションは図 1 に示されているように、同等のダイオードブリッジの約半分の PCB 面積のソリューションで電力損を減らし、効率性を向上させ、動作温度を低下させました。
図1. GreenBridge™ 1ソリューションと従来のダイオードブリッジ・ソリューション
IEEE 802.3bt 互換 のFDMQ8205 には、2つの N チャネルと2つの P チャネルの 100 V 定格 MOSFET および必要なすべてのゲートドライバが含まれています。このデバイスは、それを駆動または保護するための外部回路を必要とせず、最小の RDS(on) を実現します。FDMQ8205 に基づく GreenBridge ソリューションは、従来のダイオードブリッジ・ソリューションと比較して、ワット損が最大 10 倍向上します。全体的なシステム規模は、従来のダイオードブリッジ・ソリューションの4分の1未満です。
図2. GreenBridge™ 2ソリューションとダイオードブリッジ・ソリューション
Quad MOSFET のアプローチによりエネルギー効率の良い PoE ソリューションを実現する方法に関しては、こちらをご覧ください。
1. IEEE 802.3bt 互換 PoE-PD インターフェース・コントローラ: NCP1095、NCP1096
NCP1095 および NCP1096 PoE-PDインターフェース・コントローラには、検知、分類、および電流制限を含め、PoE システムに必要なすべての機能が組み込まれています。これらデバイスは、PD の種類および分類に基づき電力を最適に配分する外部パストランジスタおよび Autoclass を備えています。NCP1096 は、より高度の統合を提供することにより、Type 3 または 4 の PoE コントローラで利用できる、最小の RDS(on) の内部ホットスワップ FET トランジスタを搭載しています。 NCP1095GEVB および NCP1096GEVB 評価ボードを使用することにより、物理的な設計を実装する前に、両コントローラの動作を迅速に評価できます。これらの評価ボードには、GreenBridge2 アクティブ、RJ45 コネクタ、および LAN 変圧器が含まれています。
図3. NCP1095/NCP1096 コントローラ
2. 100 V N チャネル PowerTrench® MOSFET
FDMC8622 MOSFET は、Shielded Gate 技術が組み込まれた先進の Power Trench® プロセスを使用して開発されています。このプロセスは、RDS(on)、スイッチング性能、および耐久性に関して最適化されています。FDMC8622 は、高出力の電流処理能力をサポートしており、幅広く使用されている100% UIL 試験済みの表面実装パッケージで提供されます。
3. DC-DC コンバータ
NCP1566 は、高度に統合されたデュアルモードのアクティブクランプ PWM コントローラであり、テレコムおよびデータコム業界で使用される次世代の高密度・高性能・中低電力の絶縁型 DC-DC コンバータをターゲットとしています。入力電圧フィードフォワードを備えた電圧モード制御またはピーク電流モード制御を使用して設定できます。ピーク電流モード制御は、入力電圧フィードフォワードでも導入できます。調整可能な適応型オーバーラップ時間は、入力電圧および負荷状態に基づいてシステム性能を最適化します。このコントローラには、絶縁アクティブ・クランプ・フォワードまたは非対称ハーフブリッジ・コンバータを導入するために必要な制御および保護機能がすべて組み込まれています。
4. ESD 保護ダイオード
ESD8004 は、高速データ回線を ESD (静電気放電)から保護するために設計されています。このデバイスは、超低キャパシタンスおよび低 ESD クランプ電圧により、電圧にセンシティブな高速データ回線を保護する理想的なソリューションです。
なぜ PoE か?
無線接続には多くの大きな利点がありますが、この技術のエコシステムで使用されている、すべてのデバイスの電力およびデータ要件は大きく異なります。PoE の特長と機能を導入すると、下記に示す多くの利点が得られます。
- 時間およびコストの節約: 電力ケーブルが不要なため、コストおよび設置時間が削減されます。電源の配線規制が適用されず、資格を持った電気技師も必要ないため、設置も容易です。
- 柔軟性: 電源の近接性を考える必要がありません。機器は、LANケーブルが敷設されていれば、どこでも設置できます。
- 信頼性: 集中型の電源が低価格の壁のコンセントに置き換わり、システムは1台の無停電電源装置によりバックアップされます。
- セキュリティ: 無線よりも堅牢な安全性とセキュリティプロトコルを提供するため、ハッカーからの防御性が高まります。
- 簡素性および利便性: PoE は、電力とデータを同時に伝送できるため、配線の煩わさが減り、効率的で使い勝手がよくなります。
まとめ
最新の PoE 規格である IEEE 802.3bt は、最大 90W の PD 電力により設計者をサポートし、コネクテッド照明、防犯カメラ、デジタルサイネージ、テレコム、POS (販売時点情報管理システム)端末、および衛星データネットワークなどの、より高出力のアプリケーションの道を切り開きます。オン・セミコンダクターは、フルレンジの IEEE 802.3bt 互換 PoE-PD ソリューションを提供し、供給電力を 100W へ拡張し、数多くのリファレンス・デザインとアプリケーションメモにより、エネルギー効率、サイズ、熱性能などの課題を解決します。この技術をすべての開発技術者にとって使い易くすることにより、相互運用性が保証された、よりエネルギー効率の高いコネクテッド・デバイスをより多く実現できます。
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