1月 23, 2025

Share:

アナログ&ミックスドシグナル・グループのCTO、ヴィジェイ・レンタラ(Vijay Rentala)に聞く


Q:エレクトロニクス業界は、急速な技術革新と変化を伴う躍動の時代を迎えています。このことがオンセミの製品開発への取り組みや、Treoプラットフォームのような画期的な新製品の発売に、どのように反映されていますか?

A:テクノロジーは決して立ち止まることはなく、オンセミではお客様のニーズにより適切に応えるために、常に技術革新と改善に努めています。このことから、オンセミの新しいTreoモジュール式プラットフォームの魅力をご納得いただけるかと思います。インテリジェントなセンシングとパワーを統合した単一テクノロジーのプラットフォームは、従来の製品アプローチからの大きな転換となります。この適応性は幅広い産業やアプリケーションに役立つでしょう。


Q:Treoによる興味深い新しいアプローチのようですね。オンセミの既存のソリューションとどのように異なり、導入された主要な技術進歩は何ですか?

A:はい。それでは、Treoアナログおよびミックスドシグナル・プラットフォームについて詳しく見ていきましょう。これは65nmプロセステクノロジーで、バイポーラCMOS-DMOS (BCD)トランジスタを組み合わせた統合テクノロジープラットフォームです。これにより、高度なデジタル処理、高性能アナログ、および高電圧電力供給が1つの集積回路で可能になり、最大175℃の動作温度まで対応できます。私たちは、これが当初から自動車業界の厳格な信頼性基準を満たすように設計された、市場で最も高度なBCDプラットフォームソリューションであると確信しています。

このプラットフォームは、再利用可能な設計モジュールまたはブロック(アナログ、デジタル、またはパワーIP)の形をした新しい知的財産(IP)に依存しています。これらのIPは、新しい製品を開発するために、ほぼ無限の構成で組み合わせることができます。このモジュール性により設計プロセスが簡素化され、高い統合性と品質を維持しながら、迅速に製品開発を行うことができます。

図1:インテリジェントなパワーマネジメント、センサーインタフェース、および通信ソリューションの開発を加速するモジュール式アーキテクチャーを備えたTreoプラットフォーム

Q:電子エンジニアにとって、多くの場合、効率とパッケージングが重要な設計要素です。Treoの65nm BCDプロセスは、効率の向上とシステムの小型化にどのように貢献しますか?

A:Treoプラットフォームでは、正確なアナログ制御、高速デジタル処理、効率的な電力処理が可能であり、このプラットフォームが小型化をシステムレベル統合からチップレベル統合に進化させ、一段高いレベルに引き上げていることは間違いありません。この統合により電力損失が最小限に抑えられ、より効率的な熱管理を実行できます。

また、統合のタスクをエンジニアからプラットフォームの開発に移行するため、Treoベースの製品は、大部分のBCD以外の同等プロセスよりもさらに設計の統合を強化できます。さらに、物理的に大きなBCDプロセスと比較して、65nm設計ではトランジスタをより小型化することができ、消費電力とコンポーネントサイズが低減されます。そのために、効率とパッケージングが十分に考慮されました。


Q:これが実用レベルで持つ意味に注目しましょう。このプラットフォームをベースにした最初の製品は何になりますか?また、Treoをどのように活用すれば、最終アプリケーションにメリットをもたらすことができるのでしょうか?

A:Treoプラットフォームで構築された最初の製品は汎用性を持つように設計されており、機能強化のために10個以上のIPブロックを活用するものがあれば、少数のIPブロックのみ使用してサイズと統合に重点を置くものもあります。初期のソリューションサンプルには、超音波センサー、ロジックトランスレーター、シングルペア・イーサネットコントローラーが含まれています。

一例がT30LMXT3V4T245ロジックレベルトランスレーターです。BCDテクノロジーを使用すると、既存のレベルトランスレーターの性能を上回り、優れたシグナルインテグリティと高い耐熱性を確保しながら、400Mbpsのピークデータレートを達成します。これは、より高速なギガビットイーサネット・ネットワークへの移行が進んでいて、信頼性の高いロジックレベル変換が非常に重要である産業オートメーションや自動車ADASのような高速システムに有効です。

Treoプラットフォームのロードマップには、センサーインタフェース、PMIC、および48V電力供給システム向けソリューションなどの高度なアプリケーションも含まれており、エネルギー効率と統合の限界をさらに引き上げます。このプラットフォームは、自動車および産業用から医療用ウェアラブルデバイスやスマートホーム機器に至るまで幅広い業界において、次世代製品の開発を支援します。



Q:それは今後の製品開発への有望なビジョンを示しています。補足として、Treoのモジュラー設計は製品開発サイクルにどのような影響を与えると思いますか?また、他の競合するBCDプラットフォームと比較して、何か具体的な利点はありますか?

A:アナログ、デジタル、パワーの各領域で再利用可能なビルディングブロックを備えたモジュール式プラットフォームの重要な強みの一つは、基本的なエレメントを再設計することなく、変化の激しい市場要件に対応できる新製品の開発が可能になることです。ただし、このメリットを享受するには、ビルディングブロックが最初から高品質であることが必要です。モジュール式プラットフォームのパフォーマンスを長期にわたって向上させようとすると、製造上の問題やビルディングブロックとの互換性の問題が生じる可能性があります。

Treoでは、最初から連携できる多くの堅牢なモジュールを確保しました。これはTreoプラットフォームが、消費者向けモバイル端末から産業用および車載用システムまで、あらゆる要求に応えることができるように、自動車認定、高い動作温度、1~90Vの電圧範囲に対応することを意味します。


図2:TreoのIPビルディングブロックで単一プラットフォームから新しい製品タイプの開発が可能

もちろん、BCDやモジュール式プラットフォームは新しい概念ではありませんが、Treoではこれまで見たことのないものを創造したいと考えました。より小型の65nmは、市場に存在する既存のBCDプラットフォームに対する明らかな利点の一つですが、モジュールの性能と幅広さも重要です。Treoには、アナログ、デジタル、ミックスドシグナル、およびパワー専用の各モジュールが用意されており、またオペアンプや低ノイズアンプ(LNA)、デジタル信号処理(DSP)、メモリブロック、センサーインタフェース、DC-DCコンバーターなどの機能エレメントも含まれています。

オンセミの製品開発プロセスは、すべてのブロックに互換性があり、自動車認定を満たすことができるモジュラー設計アプローチによって加速されます。新しいTreo製品は、事前に認定されたIPブロックを2個だけ使用することも、10個以上使用することもできます。いずれにしても、繰り返しの設計検証と認証の必要は少なくなります。


Q:持続可能性は、エレクトロニクス業界全体でますます重要な要素になっています。オンセミは、Treoプラットフォームの信頼性と寿命を確保するために、どのような対策をとっていますか?

A:一般的に、エレクトロニクス業界は最初に消費者市場から始まり、次により厳格な性能が求められる自動車市場に進出します。それに対して、すべてのTreo IPブロックはグレード0の自動車認定向けに設計されています。これにより、最高175℃の温度で動作でき、モジュールによっては最高200℃の温度に耐えることができます。また、自動車認定デバイスの構築も驚くほど簡単になります。オンセミがIPを集約したため、構築するデバイスは基本的に市場投入への準備ができています。

Treoプラットフォームの設計では、効率的な電力処理や正確な電圧制御を重視すると同時に、抵抗性および容量性コンポーネントを調整するレイアウトを通じて、寄生効果を管理しています。高度なアーキテクチャーにより強化された絶縁手法を備えており、電磁干渉を低減し、信頼性を向上させます。画期的なディープトレンチ絶縁により、対称的な+/- 1~90V動作を可能にしています。これらの要素がプラットフォームの信頼性に貢献しており、Treoベースの製品は確実に長期間にわたって過酷な状態に耐えることができます。


Q:ありがとうございました。ここからは未来を占っていきましょう。Treoプラットフォームはオンセミの将来の製品開発にどのように影響し、これらの製品を使用するエンジニアにとってどのような意味を持つのでしょうか?

A:Treoプラットフォームの適応性は、少なくとも今後10年間、場合によってはさらに長期間にわたってオンセミ製品の基盤となり、市場のニーズに合わせてオンセミ製品のパフォーマンスとインテリジェンスを向上させるのに役立ちます。その期間中に、より統合が進んだ高性能ソリューションをより迅速に提供できるようになり、オンセミとオンセミのお客様が絶えず変化する市場の要求に対応するのを支援します。

より包括的で小型のソリューションを提供するプラットフォームの能力は、統合タスクをなくし、設計の労力を軽減し、部品点数を削減するのに役立ちます。これにより、エンジニアは、自動運転車や産業オートメーションから、エッジAIデータセンターや5Gに至るまで、幅広いアプリケーションに新たなレベルの統合、インテリジェンス、パフォーマンスをもたらす最先端ソリューションを開発できるようになります。

結論として、Treoのユニークな適応性は、市場にあるすべての自動車、産業用、および医療用アプリケーションの最大70%に対応できることを意味します。これはエンジニアが明日の魅力的なイノベーションを創造するのに役立つ汎用性と拡張性を備えたソリューションです。


Treoプラットフォームの詳細、およびBCDテクノロジーに基づくオンセミ製品がお客様のアプリケーションに与える影響については、onsemi.jp/treoをご覧いただくか、サンプルをご注文ください