10月 19, 2020

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前回のブログでは、「電源電圧変動除去比(PSRR)の現実的視点: パート IV」と題して、PSRRパラメータに関して説明しました。今回のブログでは、シリーズの続きとして、「ドロップアウト」の意味に的を絞り、低ドロップアウト値および超低ドロップアウト値に関連する LDO (Low DropOut Regulator、低ドロップアウトレギュレータ)向けに提供している、オン・セミコンダクターの製品およびソリューションについて説明します。皆さんのアプリケーションで、低ドロップアウトの LDO が必要ですか?これから、ドロップアウトの意味、測定方法、および通常のドロップアウトと超低ドロップアウトの LDO の違いについて説明します。

ヘッドルーム(VIN -VOUT)は、LDO のドロップアウト・パラメータの値より高い必要があります。ドロップアウトは、LDO が正しく機能するために最も重要なパラメータの1つです。ドロップアウトは、VDO = VIN -VOUT,NOM で表される電圧差であり、LDO は、それを適切に調整する必要があります。VOUT,NOM は、調整中の LDO における出力電圧の名目値です。通常、ドロップアウト値は、VOUT が名目値よりも約 3% または 100mV 低いときに測定されます。 たとえば、VOUT が約 100mV 降下するときに値を測定することは簡単です。通常、ドロップアウト・パラメータは名目出力電流に関して測定されます。というのも、ドロップアウトは VOUT  が VOUT,NOM を約 3% 降下したときに測定されるからです。つまり、出力は電流源(たとえば、シンク定電流に対する能動負荷)に接続しなければなません。抵抗が出力に接続されていると負荷出力電流が低下し、測定は無効となるでしょう(下記の図を参照してください)。


Dropout region and regulation region
Dropout region and regulation region

図1(ドロップアウト領域および調整領域)

 


Measurement of dropout values
Measurement of dropout values

図2(ドロップアウト値の測定)

LDO は良好なダイナミック性能を得るために、VDO のドロップアウト値を大きくして、
VIN と VOUT の間に電圧差を設ける必要がある

 

ほとんどのLDO はパスデバイスである MOSFET P チャネル(PMOS)を備えており、これは低出力電圧の場合はやや不利になります。PMOSパスデバイスを持つ LDO のドロップアウトVDOは、名目出力電圧 VOUT,NOM が低いと増加します。たとえば、下記の表を見てください。ここで NCP161 を使用しているとします1.8V オプションの方が、3.3V オプションよりもドロップアウト値がはるかに大きいことがります。


figure_ldochart

 

PMOSデバイスの LDO は不利です。というのは、最小入力電圧 VIN,MIN がかなり高いからです。NCP110 も PMOS デバイスの LDO で、超低 VIN です。また、VIN,MIN = 1.1V です。NCP110 の最小出力電圧オプション 0.6V の場合、ドロップアウト値は 500mV です。

超低ドロップアウトまたは 0V に近い出力電圧オプションが要求されている場合、バイアスレール LDO を使用できます。この種の LDO は、パスデバイス MOSFET N チャネル(NMOS)を備えており、超低ドロップアウトを達成するためには VOUT よりも約 1~2V 高い補助電源 VBIAS に接続する必要があります。バイアスレール LDO は従来の LDO と同じ構造ですが、内部ブロック(パスデバイス以外のすべて)への電源は VIN。 に接続されず、二次電源として分離されています。これらのデバイスの例として、NCP130NCP134NCP137、および NCP139 があります。NMOS パスデバイスの LDO は PMOS パスデバイスの LDOと比較して、出力電圧のドロップアウト値がほぼ独立しています。

これらのデバイスは、公称出力電流で 40mV ~ 150mV のドロップアウト値 VDO を備えています。しかし、先に述べたように VBIAS 電圧を接続する必要があります。そうしなければ、 Vold 単位により、ドロップアウトがはるかに高くなります。下の図は、電圧差 VBIAS-VOUT が低下したとき、つまり VBIAS 電圧が十分高くないときに、NCP134 のドロップアウトに何が生じるかを示しています。


NCP134’s dropout dependent on difference VBIAS - VOUT
NCP134’s dropout dependent on difference VBIAS - VOUT

図3(NCP134のドロップアウトは、電圧差VBIAS-VOUTに依存)

 

また、パスデバイスを NMOS とし、VBIAS を供給しない LDO も可能です。内部ブロックへの供給には、チャージポンプデバイスを使用しています。このチャージポンプデバイスは、VIN 電源から 2 倍の内部 VBIAS 電圧を作り出します。

 


Difference in dropout of NCP134 and NCP161
Difference in dropout of NCP134 and NCP161

図4(NCP134NCP161 のドロップアウトの違い)

 

図4は、PMOS パスデバイスの LDO と NMOS パスデバイスの LDO のドロップアウトの違いを示しています。通常、PMOS パスデバイスの LDO は、出力電流がゼロのときにドロップアウト値がゼロではありません。LDO ドロップアウトのこの部分は、内部の電圧リファレンスのドロップアウトです。もうひとつの部分は、パスデバイスのサイズによってのみ決定されるドロップアウトです。NMOS パスデバイスの LDO は VBIAS 電圧から供給される内部リファレンスをもつため、第 1 の部分はありません。NMOS パスデバイスの LDO のドロップアウトは、パスデバイスのサイズによってのみ決定されます。

 

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