9月 26, 2018

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前回の「 LDOノイズとは?パートI」と題するブログで、ノイズの意味とその表現方法、そしてオン・セミコンダクターが提供する超低ノイズの LDOレギュレータに関して説明しましたが、今回は、積分ノイズの意味について詳しく説明します。

積分ノイズの値は、スペクトルノイズ密度関数の積分から導き出されます。ただし、曲線を関数で表現して積分するのは複雑すぎます。計測値の曲線を細かく分ける方が簡単です。各部分の周波数差( fn+1 – fn)がゼロの場合、寄与分の合計はその関数の積分と一致します。



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実測において、周波数差( fn+1 – fn)ゼロを達成することは不可能ですが、ゼロに近くすることは可能です。スペクトルノイズ密度の計測では、精度の高い積分ノイズを達成し、振動のピークを検知できる多くのポイントがあります。今回のケースでは、周波数10 Hz ~100 kHzに6,400個のポイントがあります。スペクトルノイズ密度曲線は、6,399個の間隔で補間され、VNOISE,AVG,nとして表現されます。


下の図は、NCP110 LDOレギュレータのスペクトルノイズ密度を示しています。NCP110 LDOレギュレータの計測値を最後の公式へ入力すると、下の表に示した積分ノイズの結果が得られます。スペクトルノイズ密度曲線は、COUTの値がより大きいため低い周波数の方へ移動しますが、積分ノイズは、増加します。なぜでしょうか?下の図を見ると、IOUTおよびCOUTに関わるピークが周波数範囲10 Hz~100 kHz(ここで積分ノイズが計算されます)へ移動していることが理由だと分かります。


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一部のLDOで、出力コンデンサの高い値を選べばどうでしょうか?見て分かるように、出力電流および出力コンデンサに関わるピークは出力コンデンサの値が高くなり、出力電流が低くなると、10Hz〜100kHzの有効周波数範囲に拡大して移動します。

たとえば、出力コンデンサの値が10uFのように高い場合、過渡応答が改善されます。過渡応答の改善は、高い値の出力コンデンサを使用する理由となり得ます。この例では、NCP110は、より高い出力コンデンサを使用している時に、リンギングが発生し(複数のアンダーシュート)、過渡事象へ落ち着くまでの時間が長くなりますが、それでも安定しています。下の表が示すように、リンギングによりピークが上昇し、積分ノイズも増加します。NCP110 LDOレギュレータは、1uFという低い値の出力コンデンサ向けに設計されており、容量を追加すると過渡応答は改善しますが、システムのノイズ特性に影響を及ぼします。


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積分ノイズは、LDOが特定の周波数範囲においてどの程度のノイズを発生させるかを示す方法です。このノイズの計測方法およびシステムレベルの設計への影響を理解することは、ノイズのない電源を設計するときに重要です。この計測方法およびシステムレベルの設計への影響については、電源除去比(PSRR)に関する次回のブログで説明しますので、ご期待ください。それまで、今回のトピックの詳細に関しては、当社の NCP110 データシートをご覧ください。