11月 15, 2022

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3相永久磁石ブラシレスDC(BLDC)モータは、制御用の電子転流回路を必要としますが、従来のブラシ付DCモータは機械的に自己転流します。ブラシ付DCモータとは異なり、BLDCモータには定期的なメンテナンスや交換が必要なブラシがないため、損耗しにくくなっています。ここでは、BLDCモータの構造と制御について簡単に説明し、続いて以下の3つの転流方式を紹介します。

  • 台形転流
  • フィールド指向制御
  • 直接トルクと磁束制御

最後に、3つすべての転流方式を1つのモータコントローラ集積回路(IC)で実現するBLDC転流への革新的なアプローチを提案します。

 

BLDC構造

BLDCモータは、ステータに3相の電機子巻線があり、ロータに永久磁石がある回転電気モータです。ステータに永久磁石が配置されているブラシ付DCモータの反対です。BLDCモータロータの磁石が一定の磁界を与えることで、高効率、低慣性モーメントの高トルクモータを実現します。3相BLDCモータの制御設計では、ディスクリートコンポーネントを使用して転流回路を実装するか、もしくはパワーモジュールを統合した専用の制御ICを実装することができます。この統合ソリューションは、PCB面積と製造ステップの縮小を通じて、システム全体のコストを削減し、ソリューションの信頼性を向上させます。BOMを最小限に抑え、在庫コストを削減し、新しいインバータ設計時に派生ソリューションの素早い再利用を促進します。

 

BLDC制御

3相フルブリッジ方式の電力ステージとコントローラで、一般的な3相BLDCモータドライブが構成されます。これらの構成で3個のホール効果センサに基づく3相パルス幅変調(PWM)信号を供給するか、あるいはエンコーダによりセンサ動作での位置フィードバックまたはセンサレス動作での逆起電力信号の検出を行います。BLDCモータのステータ巻線は台形状の逆起電力波形を生成します。

 


figure_figure1_bldc_hall_sensors_locations

図1:BLDCホールセンサの位置(https://www.onsemi.com/pub/collateral/tnd6041-d.pdf

 

台形転流

制御アルゴリズムがシンプルでよく使われる6段階の台形転流は、2個の電源スイッチデバイスを使用し、各モータフェーズで所定のシーケンスに従います。3個のホール効果センサがロータ位置情報を提供しており、モータ速度の制御に非常に効果的です。6段階のスイッチングシーケンスは、モータが回転するときに(60°間隔で)2つの連続するモータフェーズを実行するようになっています。

 


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図2:6段階の台形制御波形(https://www.onsemi.com/pub/collateral/tnd6041-d.pdf

 

フィールド指向制御

ハイエンドのアプリケーションにより適しているのは、さらに複雑で高い処理能力を必要とする転流方式であるセンサ付またはセンサレスFOCです。モータ電流フィードバックに基づき算出された電圧および電流ベクトルによりモータ巻線を転流し、広い動作範囲で高効率を維持しながら、速度とトルクの両方の精密なダイナミック制御を可能にします。

 

直接トルクと磁束制御

DTFCは、オンセミとTheta Power Solutions, Intl(TPSI)が共同で開発したもので、センサレスBLDC転流への独自で新しい、より効率的なアプローチです。この方法は、磁束を弱めることで、低速・重負荷で動作するBLDCモータの高速性能を向上させ、トルクリップルを最小化するものであり、高慣性負荷の制御減速に最適なブレーキアルゴリズムとなります。

 

3-in-1の選択制御

オンセミのコンフィギュラブルモータコントローラEcoSpin™ファミリは、3種類のBLDC制御方式をすべて選択できます。ECS640Aはシステムインパッケージ(SiP)ソリューションで、Arm® Cortex®-M0+マイクロコントローラ、3個のセンスアンプ、リファレンスアンプ、3個のブートストラップダイオード、および高速動作用に設計された高電圧ゲートドライバを統合しています。最大600 Vで動作するMOSFETとIGBT (FAN73896)を駆動し、外部電源デバイスに350 mA/650 mA (標準)のゲート電流をシンクまたはソースする6個のゲートドライバ出力と、センサ付またはセンサレス動作をサポートするホールセンサ入力を備えています。このデバイスは、ディスクリートパワーデバイスと組み合わせて使用するのに最適で、設置面積が小さく統合の柔軟性が高いため、スケーラビリティを最大化できます。

モータ制御システムの設計者は、統合ソリューションにより、モータを回転させるための細かな要件に迷うことなく、簡単に素早くシステムをセットアップすることができます。使いやすいGUI(グラフィカルユーザインタフェース)によってコード開発も簡素化され、市場投入までの時間の短縮が可能です。

 

柔軟性と統合性

BLDCモータの利点を十分に活用するには、理想的な転流方式を実装する必要があります。集積度が高く、転流オプションの数が最も多いBLDCモータコントローラICを選択するのが最も理にかなっています。オンセミの ECS640Aモータコントローラは、白物家電、冷凍用コンプレッサとブロワ、ボトルクーラ、HVACブロワとコンデンサ、プールポンプ、産業用ドライブとポンプ、ロボットなど、センサ付およびセンサーレスアプリケーションに柔軟に対応できます。

オンセミのECS640Aモータコントローラとその他のモータ制御ソリューションの詳細については、こちらをご覧ください。