4月 10, 2024

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オンセミのCEM102 + RSL15プラットフォームによるスマート医療および環境科学へのエレクトロケミカル(電気化学)センシング技術の導入
図1:オンセミのCEM102 + RSL15プラットフォームによるスマート医療および環境科学へのエレクトロケミカル(電気化学)センシング技術の導入(出典: オンセミ)


今日の高度技術時代においては、さまざまなセンサが普及し、電気化学反応を利用したエレクトロケミカル・センシングの重要性が急速に高まっています。化学物質の定量化によって、医学や環境科学、工業材料や食品加工など、さまざまな分野での安全性、効率、意識が向上します。このセンシング機能を低消費電力のアナログフロントエンド(AFE)デバイスやBluetooth® Low Energy技術と組み合わせることで、これらのソリューションの有効性をさらに向上させ、人々の生活を豊かにすることができます。

センサにおいて、センシング(検出)の対象は電気的信号・化学的反応由来の電気信号であり、それらを半導体デバイスに接続することにより、エレクトロケミカル・センシングのメカニズムを科学的に明らかにし、それらを多様なアプリケーションに応用することで、私たちの生活の質を向上させることが可能となります。糖尿病患者の血糖値を監視するウェアラブルデバイス、環境汚染物質の評価に使用されるガス検知器、食品の安全性を改善するためのヒスタミンセンサ、工業用ポテンショスタットや腐食センサなどのソリューションはすべて、現代社会で重要な役割を果たします。


エレクトロケミカル・センサの内部

エレクトロニクス分野におけるエレクトロケミカル・センサの代表的な構成は、以下の3 電極システムです(図 2)。

左は代表的なエレクトロケミカル・センサ(市場で入手可能)のイメージ、右は構成イメージで特に右下は酸化還元反応のイメージ
図2:左は代表的なエレクトロケミカル・センサ(市場で入手可能)のイメージ、右は構成イメージで特に右下は酸化還元反応のイメージ(出典:オンセミ)


センサは3つ電極から構成され(3電極法、図2)、作用電極(WE)では電気化学反応が起こり、発生した電子を電流として検出します。対電極(CE)は、WEで充分な酸化還元反応を起こさせるための電位設定を行い、参照電極(RE)はWEの電位をモニタしてCEへの電位設定フィードバックを行い、化学反応によるWEでの充分な電流(電子)の検出とそのためのCEからの電位設定のバランスを取ります。

WEによって生成された超微弱な電流は電圧に変換され、デジタル信号として波形整形され、デジタルシグナルプロセッサへ転送されます。ここで、さらにデジタル処理とワイヤレス通信を追加することにより、センシングされたデータを有効利用することができ、私たち自身の身体だけでなく周囲の環境についてもその状況変化を常時把握できる、強力なコネクテッドソリューションを構築できます。


エレクトロケミカル・センシングアプリケーション

エレクトロケミカル・センシングの技術は、糖尿病の管理のためにも重要な技術です。この技術は、連続血糖モニタリング(CGM)に応用され、皮膚に取り付けられたエレクトロケミカル・センサを使用して、血糖値のリアルタイムの情報を測定します。測定されたデータは、モニタリングデバイスに送信され、患者や医療専門家がグルコースレベルの動向をリアルタイムで把握でき、このように遠隔患者モニタリングアプリケーションにも不可欠です[1]。また、11人に1人が糖尿病と疑われ、その患者数は急速に増加し、CGM装置市場は2023年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)9%で成長すると予測されます[2]。

大気汚染/品質測定などの環境設定では、一酸化炭素、硫化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物などのガスを検出するのにエレクトロケミカル・センサが使用されます。また、食品製造では味とアレルギー物質や有害化学物質が含まれていないことを確認するために、ハンドヘルド携帯機器や生産ライン上での迅速な検査やリアルタイムの品質管理に使用されます。

エレクトロケミカル・センサとAFEデバイスの併用で正確な測定が可能になることは、ヘルスケアや産業プロセスにとって重要であるだけでなく、科学的知識の発展にも貢献します。例えば、ウェアラブルまたは携帯医療機器を使用すると、血糖値の持続的な遠隔モニタリングが可能になり、研究者に提供される前例のない洞察力は、世界中の人々に利益をもたらし、イノベーションを加速することとなります。


オンセミのエレクトロケミカル・モニタソリューション

オンセミはこのほど、超微弱な信号変化を検出モニタするアンペロメトリー(電流変化検出型)とポテンショメトリー(電圧変化検出型)に対応した小型 AFE である CEM102 の発売を発表しました。CEM102は、RSL15 Bluetooth 5.2認証ワイヤレスマイクロコントローラとペアで使用するように設計されており、業界で最も低消費電力のセキュアなBluetooth Low Energy技術を提供します。このソリューションを使用すると、信号変化の非常に正確な検出を低消費電力でコンパクトに実現可能にするセンシングアプリケーションを開発することができます。

オンセミのCEM102 AFEとRSL15を組み合わせたソリューションで、正確な電気化学測定 とワイヤレス通信を提供
図3:オンセミのCEM102 AFEとRSL15を組み合わせたソリューションで、正確な電気化学測定 とワイヤレス通信を提供(出典:オンセミ)


オンセミのCEM102 + RSL15ソリューションは、個別部品の集合体で構成したディスクリートソリューションと比較して、精度の向上、ノイズの低減、低消費電力を実現します。これにより、部品を削減し、構成の柔軟性が向上し、最終的に開発リソースを低減することができます。小型化、高精度、低消費電力により、多様なセンシングソリューションに対応することが可能となります。

CEM102 + RSL15プラットフォームは、1.3~1.65Vと2.375~3.6Vの2種類の電池選択をサポートしており、18ビットADCが連続変換を実行するアクティブ測定モードでのデバイスの消費電流はわずか3.5uAです。これは、3mAhの電池1個だけで、業界で主流となっている医療用ウェアラブル機器のパッチ交換周期である14日間の動作を実現します。

1.884×1.848mmのコンパクトなパッケージで、1~4極の電極の柔軟な組み合わせに対応した測定動作が可能なため、より小型で効率的なウェアラブルヘルスケア・ソリューションを実現し、ユーザー体験の向上に役立ちます。

開発を簡素化するために、CEM102 + RSL15は最先端ハードウェア、広範な開発サポート、ファームウェア、ソフトウェア、iOS® およびAndroid™ デモアプリケーション(図4)を提供しており、複数のセンサを使用した継続的なセンシングを容易に実行できます。

CEM102評価ボードで動作するように設計されたオンセミのデモアプリケーション
図4: CEM102評価ボードで動作するように設計されたオンセミのデモアプリケーション(出典:オンセミ)


さまざまな化学電流の正確な検出と測定は新たな科学的進歩への扉を開いています。小型フォームファクタと業界で最も低い消費電力により、あらゆるエンド・アプリケーションのさらなる小型化とバッテリ寿命の延長が可能になります。CEM102とRSL15のプラットフォームが提供するソリューションは、例えばライフサイエンスの分野では、血糖調節を強化し、糖尿病関連リスクを低減し、私たちの生活により適合する医療で使用されるような、コンパクトで柔軟性があり、手頃な価格のコネクテッド製品を設計するエンジニアを支援します。

エレクトロケミカル・センサの使用は、ヘルスケア、環境モニタリング、産業安全の分野で幅広く普及が進み、社会形成において重要な役割を果たします。この技術の多用途性は現在利用されているものを凌駕しており、オンセミが提供する最先端のプラットフォームは、科学研究を推進し、新たなアプリケーションを見いだすのに不可欠です。


「 CEM102」の詳細とオンセミのセンサ製品の詳細

[1] https://www.diabetes.co.uk/diabetes-prevalence.html

[2] https://www.precedenceresearch.com/continuous-glucose-monitoring-device-market

Featured

RSL15
Bluetooth® 5.2 Secure Wireless MCU
CEM102
Analog front end (AFE) for very low power Continuous Glucose Measurements (CGM) and similar applications.