5月 23, 2019

Share:

このブログは、シャント抵抗器の接続をテーマにする3部構成のシリーズ最終回です。第1弾では「接続ミスの診断」について議論し、第2弾では「正確な接続」について議論しました。

今回は、PCB設計のシャント抵抗器の接続に着目し、良い接続のPCBと悪い接続のPCBで測定データの精度を比較します。

シャント抵抗器を接続するときは、そのシャント抵抗器に推奨された接続方法を用います。接続の配線は、同じ長さ、同じサイズにし、可能な限り短くします。電流センスアンプとシャント抵抗器は、必ずPCBと同じ側に配置するようにしてください。精度を最高レベルに高めるためには、ケルビンシャントとも呼ばれる、4端子シャント抵抗器を使用します。

下記の図1で、緑の枠は、シャント抵抗器から入力ピンへのセンスラインの配線領域を囲んでいます。抵抗パッドにつながるトレースは同じ長さ、サイズになっており、シャント抵抗器がパッドに接続する場所に対してパッドの内側の中央で終端しています。


figure_csa3figure1

図1.シャント抵抗器に最適に接続されたNCS21xR顧客用評価基板のレイアウト

図2は、この電流シャント測定実験に使用された2つの顧客用の評価基板を示します。左側の「Good」のラベルが付けられた基板は、抵抗パッド(R1)の近傍に1 mΩのシャントがきちんとはんだ付けされており、センスラインの接続は、2端子シャント抵抗器の接続方法に関する典型的なメーカーの推奨事項に基づいて最適化されています。

右側の「Bad」のラベルが付けられた基板は、シャントへのセンストレースの接続を除いて、「Good」ボードとまったく同じように設定されています。シャント抵抗器の誤った接続による、望ましくない影響を説明するために、センスラインを単純に切断し、センス抵抗パッドの異なった場所に配線しなおして、誤って設計されたPCB基板の接続をエミュレートしています。


figure_csa3figure2

図2.NCS213R顧客用評価基板「シャント抵抗器の良い接続 VS 悪い接続」

IN+とIN-の間で最も正確に電圧測定を行うには、実際の入力ピンにきちんと接触できるように細かいチッププローブを使用してください。シャント抵抗器の正確な測定では、接続の性格な位置はシャント抵抗器の下にあって手が届かないため、「電流センスアンプ・シャント接続パート2:シャント抵抗器の正確な接続」で示した正しい位置の真上にあるシャント抵抗器上部で直接に測定します。

figure_csa3figure3

3NCS213R実験回路の概略図。出力静止電圧は1.65 V

表1の測定データは、図2で示した評価基板を使って取ったものです。使用した電流センスアンプは、1 mΩのシャント抵抗器を接続したNCS213Rです。回路の概略図には図3を参照してください。表1の「Good(良い)」接続の「測定誤差(%)」列に注意してください。理想的な出力電圧と測定された出力電圧との測定エラーは非常に小さく、1パーセントの10分の1程度であることがわかります。同様に、シャント抵抗器を通して直接測定した値と比較して、入力ピンで直接測定した値の差異は小さく、多くとも0.1%をわずかに上回るほどです。しかし、「Bad(悪い)」接続の測定では、エラーは1 Aでだいたい1.5%、10 Aでは10%を超えます。


figure_csa3table1

以下の表2に、NCS21xRおよびNCS199AxRシリーズの電流センスアンプの特徴を示します。各部品番号の顧客用評価基板は、それぞれのリンク先ページで注文できます。


figure_csa3table2

表2NCS21xRNCS199AxRシリーズ電流センスアンプ


figure_csa3table3

表3.NCS213R顧客用評価基板(PCB)部品表(BOM)

この実験の主なポイントは、シャント抵抗器へのセンスラインの接続は容易なことではなく、不用意に実施できないことを説明することです。直接的な実験と観察から、最適でないセンストレースによる接続が、許容できないエラーを引き起こすことは明らかです。また、「悪い」基板からの注意点は、シャント抵抗器を通して測定された値と比較して、入力ピンで測定された値の大きな不一致です。シャント抵抗器を通した測定値は、ぴったり正確で期待通りですが、入力ピンで直接測定した値はそうではありません。入力ピンの電圧は、追加の浮遊抵抗のために高めです。

当社の電流センスアンプの詳細は、こちらをご覧ください。