12月 13, 2018

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このブログ連載では、ワイドバンドギャップのエコシステムと破壊的なシミュレーションモデリングについて考察します。

ワイドバンドギャップ素材によって、現在のシリコンをベースとした技術から飛躍することができます。その大きなバンドギャップは、より高い誘電破壊をもたらし、より低いRspを可能にします。より高い電子飽和速度により、高周波の設計と動作を可能にします。リーク電流の低減と熱伝導率の向上により、高温での動作を促進します。

オン・セミコンダクターは、SiCダイオードに始まり、耐久性と速度を両立させたSiC MOSFET、シリコンカーバイドMOSFET用のハイエンドICゲートドライバーに至るまで、ワイドバンドギャップのソリューション周辺に注力した独自のエコシステムを提供します。ハードウェアに加え、物理的なSPICEモデルも提供することで、費用のかかる測定サイクルの代わりに、シミュレーションによるアプリケーション性能の確認を支援します。

当社の予測離散モデリングにより、RDS(on)などコンポーネントレベルの性能指数だけでなく、効率などを含むシステムレベルの性能指数に対して部品を最適化できる、システムレベルのシミュレーションが可能になります。また、設計者は、スイッチング・アプリケーションに対し、温度変動、バス電圧、負荷電流、入力ゲート抵抗など、データシートでカバーされない確かな動作条件を用いてシミュレートできます。

これがすべて機能するには、モデルは物理なものをベースにし、直感的、予測可能で、それ以上に正確でなければなりません。

IC業界では数十年前から、回路性能を正確に予測するため、SPICEモデルによるCAD設計の可能な環境が、IC設計者にとって非常に重要でした。初回の正しい設計によって、製造サイクルを短縮できます。今日に至るまで、パワーエレクトロニクスのCAD環境は、信頼できるSPICEモデルの欠如もあり、IC業界のものに大きく後れを取っていました。パワーエレクトロニクスのデバイスモデルは、簡素なサブ回路と複雑で非物理的な行動モデルに基づいています。最終的に、シミュレーション用としては信頼性がありません。


figure_figure1_wbg_spice_model

簡素なサブ回路は、すべてのデバイス性能を適切に捕捉するには機能不足です。図1に、一般の単純モデル(青)と、当社のより進んだ物理モデル(緑)とを比較したCRSSの描画と測定データ(赤)を示します。単純モデルは非線形の容量効果を捕捉していないことが明確にわかります。そのため、不正確な動的スイッチングシミュレーションになってしまいます。

より正確で複雑な動作モデルには収束問題が起こることがよく知られています。さらに、このようなモデルは、しばしば、MAST ™ のような独自のシミュレーター動作言語で記述されており、複数のシミュレータープラットフォーム間で移行できません。

一般に、パワーエレクトロニクスのモデルはプロセス技術やレイアウトをベースとしたものではなく、チップのフロアプランによるスケーラビリティも明らかではありません。

当社は、当社の物理的に拡張性のあるモデルを使用して、テクノロジ・プラットフォーム全体に適用する一つのモデルを開発しています。すなわち、実験に基づいたフィティングパラメータを詰め込んだ個々のモデルのライブラリではなく、最終的には各製品に適した曲線になるということです。当社チップのスケーリング手法により、ある製品チップのフロアプランレイアウトのパラメータを変えるだけで、ある技術内において急速に品種展開できます。

次のレベルでは、モデル内での物理をベースとしたプロセスの依存性によって、新たな仮想的なテクノロジ変更の影響を予測できます。早期の設計は、明らかにアプリケーション観点からテクノロジ要件の推進に役立ち、市場投入時間を短縮します。一方で、プロセスとデバイスの設計エンジニアは、TCADとしても知られる、有限要素デバイスシミュレーションを使用します。他方で、アプリケーションおよびシステムレベルの設計者は、SPICEベースのシミュレーション環境を使用します。プロセスパラメータをベースにしたSPICEモデルは、これら二つの世界を同時に実現するのに有用です。

次回のブログ記事では、シリコンカーバイドのパワーMOSFETモデルについて考察します。ご期待ください。