3月 07, 2023

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すべての自動車OEMにとって自動運転が次の大きな課題となる時代において、自動車内の電子制御ユニット(ECU)の数は近年劇的に増加しており、運転支援カメラやデータフュージョンなどのさまざまなアプリケーションに対応しています。また、それぞれの消費電力も増加しています。プリレギュレータの出力は用途と動作範囲に応じて、駐車支援ECUでの1桁台のワットから、データフュージョンECUの百ワット以上に及ぶことがあります。

 


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図1. 上面にヒートシンクを配置したPCB画像

 

100W降圧コンバータを使用した広範囲にわたる一連のテストで、ヒートシンクとそのサイズおよび位置がMOSFETの接合温度に与える影響を明らかにしました。また、測定値には底面にパッドが露出したMOSFETと上面にパッドが露出したMOSFET、いわゆる「トップクール」パッケージの比較も含まれています。

 

PCB設計におけるトップサイド冷却技術の利点

トップサイド冷却技術は、熱管理への重大な影響に加えて、PCB設計にいくつかの利点をもたらす効果的なソリューションです。

  • 機械的安定性の向上

トップサイド冷却技術は、従来のボトムサイド冷却技術に比べ、機械的安定性に優れています。ヒートシンクをパワー半導体コンポーネントの上部に直接取り付けると、機械的ストレスや損傷のリスクが大幅に低減され、コンポーネントの信頼性向上と寿命の延長が実現します。

  • EMI性能の向上

トップサイド冷却技術により、従来のボトムサイド冷却技術に比べてEMI性能が向上します。トップサイド冷却技術は、パワー半導体コンポーネントから生成される電気ノイズを低減することで、EMIおよびEMC規格への適合性を確保するのに役立ちます。

  • よりコンパクトな設計

トップサイド冷却技術により、ファンなどの冷却装置を設置するスペースが必要な空冷よりもコンパクトな設計が可能です。トップサイド冷却技術では、冷却部品を追加する必要がないため、システム全体のサイズと重量を削減できます。これはスペースが制限されることが多い車載アプリケーションにとっては重要です。

銅面積が少なくPCB面積が限られている実際のアプリケーションでは、発生した熱のほとんどがECUの筐体から放出されます。トップクールパッケージは、上部にある露出したパッドが直接筐体に接触するため、このような条件に適しています。大半の熱は上面から流れ、適度な量の熱は底面からPCBを通って流れます。これにより、従来の底面露出パッドパッケージで見られるPCBの温度上昇を抑えることができます。両面からの熱流を可能にすることで、PCBの寿命が延長され、システムの信頼性が向上します。

 


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図2.PCB冷却方法の図解

 

100W降圧コンバータボードは、すべての層にある大きな銅領域で最適化されているため、上面と底面の露出パッドパッケージ間で熱性能に大きな違いはありません。しかし、このことはPCBレイアウトの重要性と高価な冷却システムなしで、優れた熱性能が得られることを示しています。

測定結果は、分かりやすく配置されたグラフの比較で表示され、驚くような結果になることもあります。もちろん、このテストセットアップは、冷却フィン付きカスタムアルミ筐体内で複雑なECUの一部を成す電源など、実際のアプリケーションとは大幅に異なるものです。しかし、ヒートシンクの熱抵抗やギャップパッドの厚みなど、各種パラメータがMOSFETの温度に与える影響を明らかにしています。また、ヒートシンクを熱源(この場合は MOSFET)の上またはPCBの反対側に取り付けても、同様の性能を達成できることを明確に示しています。これはPCBレイアウトが、全層にあるサーマルビアと大きな銅面積で熱的に最適化されており、熱流がPCBを通過できることを前提としています。上面に露出パッドを備えたMOSFETはヒートシンクに接続して、PCBへの熱流を最小限に抑えることが必要です。

 


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 図3.上面ヒートシンク付きLS MOSFETの温度測定グラフ

 

当社の新しいホワイトペーパ『Cooling Concept Assessment for High Power Step Down Conversion』を参照してください。このホワイトペーパでは、ヒートシンクを使用して電子デバイスの熱ストレスを低減することの根本的な意義と、システムの熱性能がヒートシンクの位置やサイズなどの各種要素に依存することを説明しています。

 

熱管理性能の向上

車載アプリケーションの大出力降圧変換では、効率的な熱管理が重要です。従来のボトムサイド冷却技術には限界があり、電力密度の増加に伴って新しいソリューションが求められます。

トップサイド冷却では、より直接的な放熱経路を確保できるため、パワー半導体コンポーネントからヒートシンクにより適切な熱伝達が可能です。その結果、車載アプリケーションでの大出力降圧変換にとって重要な、動作温度の低下と効率の向上が実現します。トップサイド冷却技術は、従来のボトムサイド冷却技術と比較して、熱性能を最大70%向上させることができます。これはトップサイド冷却ではより直接的な熱経路が確保され、熱の移動と放散がさらに適切に行われるためです。

このホワイトペーパは、テストセットアップ、測定値から期待値を設定するためのMOSFETの損失計算、高さ10 mm、25 mm、60 mmのヒートシンクでの測定データについて明確に説明しています。ヒートシンクのフィンの高さが熱抵抗にどのように影響するかを見極めるのは興味深いことです。実際のアプリケーションでは、スペースの可用性とコストに応じて、ヒートシンクの高さでさえ慎重に考慮されます。さらに、熱抵抗が異なるギャップパッドをテストすることで、熱源からヒートシンクへの熱伝導の影響も確認できます。ヒートシンクなしとヒートシンク付きMOSFETでは約30℃の温度差があり、異なるヒートシンクや負荷電流でも同様に顕著な違いが見られます。測定結果は理論的な予想値とよく一致しています。適切な冷却システムを選択するには、コスト、スペースの可用性、およびその他の多くの要素が重要な役割を果たします。

以下に示す降圧変換または冷却評価のための当社の製品およびソリューションの詳細をご覧ください。

 

著者

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スシュルット・パタール(Sushrut Pattar、オートモーティブ・フィールドアプリケーションエンジニア

スシュルット・パタールは2020年に、1年間のローテーションプログラムでオンセミに入社しました。自動車およびUSB-C充電リファレンスデザイン用のLEDドライバモジュールを設計し、CISPR-25規格に基づくEMI測定に携わりました。その後、2021年に自動車分野のアプリケーションエンジニアに転身しました。ADAS、ブレーキシステム、およびトラクションインバータやPTCヒータなどのxEVアプリケーションで、ティア1と密接に連携し、技術的な問い合わせに対応し、オンセミのポートフォリオから信頼できるソリューションを提供しています。リファレンスデザインの設計、ラボでの測定や文書作成、アプリケーションノートの発行に積極的に取り組んでいます。

スシュルットは、2019年にドイツのダルムシュタット応用科学大学から電力工学の修士号を取得しました。

 


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マティアス・ウルマン(Matthias Ulmann、フィールドアプリケーションマネージャ

マティアス・ウルマンは、オンセミのヨーロッパにおけるADAS FAEチームを統括しています。2018年にフィールドアプリケーションエンジニアとして入社し、ドイツの主要なティア1の1社と緊密に協力し、主にADASアプリケーションに取り組んできました。オンセミ入社前は、テキサス・インスツルメンツにリファレンスデザインエンジニアとして勤務していました。設計経験としては、全アプリケーションセグメント向けの絶縁型および非絶縁型DC/DCコンバータなどがあります。2006年にウルム大学で電気工学の学位を取得しています。