10月 22, 2020

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補助電源ユニットはバッテリ式電気自動車(BEV)やハイブリッド自動車(HEV)の電源としておなじみです。制御、通信、安全装置、ドライバなどの広範な低電圧(通常20 Vまで)のサブシステムへの電力供給に欠かせません。さらに、車載充電(On Board Charging、OBC)システムや48 Vまたは12 Vのバッテリ電圧レールのように、電力供給源そのものが +400 V高電圧DCバスとつながっていない場合もあります。このように広範な用途があるため、補助電源に求められる条件は極めて多種多様であり、無数の代替ソリューションやインプリメント(実装)が市場にあふれています。

 

補助的なシステムでありながら、こうした電源には高い信頼性と安定性が求められます。なぜならこれらの電源が電力を供給しているのは、コアコントローラを含む場合もあるロジックレベル回路のようなクリティカルなブロック、またはパワー MOSFET (metal-oxide-semiconductor field-effect transistor、金属酸化膜半導体電解効果トランジスタ)や  IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)をオン・オフするゲートドライバだからです。同時にコンパクトな設計と優れたコストパフォーマンスも必要不可欠です。それは、このシステムはアプリケーションの中心構成部品ではないため、最小限のリソースで動作を完了しなければならないからです。安全性もまた最優先事項です。ほとんどの場合、システムは車載基準に適合する必要があり、EMC放射エミッションにも制限を定めています。さらに付け加えるなら、幅広い入力電圧範囲に適応し、多様な使用事例に対応できる柔軟性も、他より際立っています。最後に、補助電源は高圧絶縁を提供する必要があります。規制により義務付けられている場合、または信頼できる動作のための機能上の絶縁の場合はなおさらです。

車載向け高電圧の補助電源

あるアプリケーションに対して、上記のどの条件が重要かに応じて、補助電源はフライバック、ブースト、バックブーストなど、さまざまなトポロジで実装されます。代替のスイッチング戦略(たとえば擬似共振や固定周波数)をとることができ、インテグレーテッド技術またはディスクリート技術を活用して必要な電力を提供できます。


図1. フライバックトポロジに基づき、擬似共振ピーク電流モード制御で動作する
絶縁型補助電力供給の回路図

 

オン・セミコンダクターは最近4つの新ソリューションを発表しました。800 Vおよび400 Vバッテリ式電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)向けの15 Wまたは40 Wの電力を供給する高電圧補助電源、そしてIGBTおよびSiC MOSFETドライバ用の絶縁型電源です。これらのソリューションは前述の問題点に対処し、必要な条件を満たしています。

SECO−HVDCDC1362−15W15V−GEVB と 「SECO−HVDCDC1362−40W15V−GEVB は、BEV と PHEV 車のパワートレインに適した高効率でフレキシブルな1次側レギュレーション(primary−side regulation、PSR)の補助電源です。これらのデザインは、250 V から 900 V の広範囲の直流電圧入力に対して 15 V の電圧を安定的に供給し、400 V および 800 V のバッテリシステムに適しています。

これらのソリューションは、擬似共振ピーク電流 PSR フライバックコントローラ 「NCV1362」、コストを最適化した 160 mΩ 1200 V シリコンカーバイド (SiC) MOSFET 「NVHL160N120SC1」、そして  SiCダイオード 「FFSD0665B−F085」の様々なメリットを活用しています。SiC FET の高いブロッキング電圧と極めて低いゲート電荷量(34 nC)のおかげで、スイッチング損失が大きく削減され、低電圧条件でのアプリケーションにおいて、このデザインは最大 86% の優れた効率を示します。 「NCV1362」 コントローラの優れた駆動能力により、プリドライバを用いずに、SiC FET を 12 V で直接駆動ます。これによりレイアウトを簡素化し、部品数を削減できます。フライバックトランスは 4kV の絶縁能力を備えており、車載グレードに認定済みの半導体と受動素子によって完全に実現されています。


図2. 「SECO−HVDCDC1362−15W15V−GEVB」 の効率

 


図3. 「SECO−HVDCDC1362−15W15V−GEVB」のブロックダイヤグラム

  


図4. 15 W高電圧補助電源 「SECO−HVDCDC1362−15W15V−GEVB」 の特長

 

 「SECO−LVDCDC3064−IGBT−GEVB は、絶縁型IGBTドライバ電源で、幅広い入力電圧レンジ(6 Vdc~18 Vdc) で効率的なスイッチングを行うために必要な安定した電圧レール(- 7.5 Vおよび 15 V、50 mA/ブランチ) を供給します。加えて、より低電圧のロジックをサポートするため +7.5 V のレールも用意されています。このシステムは、DC-DCコンバータ 「「NCV3064 を利用しており、最小限の部品構成でコンパクトかつ堅牢な設計が可能です。ボードは、完全に車載グレードの部品で実現され、商用の IGBT DC/DC 電源とピン互換性があり、すぐ使える絶縁型ドライバ電源のプラグインソリューションを提供します。加えて、同じ「NCV3064」 を使用したSiCのバリエーションである、「SECO−LVDCDC3064−SIC-GEVB」 [1] を SiC MOSFET スイッチングに適応させることで、ゲートドライバ向けに + 20 V/- 5V の電圧レールを提供します。

 

図5. 1.5 W IGBT絶縁型ドライバ電源 「SECO-LVDCDC3064-IGBT−GEVB) の特長

 


 

図6. 「SECO-LVDCDC3064-IGBT−GEVB」 のブロックダイヤグラム

 

400 V、800 Vバッテリシステム向けの新たな電源設計、および IGBT、SiC ゲートドライバ向け絶縁型電源は、アプリケーションシステムに直接統合できるように、特別に設計されています。

オン・セミコンダクターの車載向け補助電源ソリューションの製品およぶツールの広範なポートフォリオは、各アプリケーションの要件を満たす最適なソリューションの提供を容易にします。

当社のAC-DCコントローラとレギュレータDC-DC コントローラとレギュレータパワー MOSFETダイオードと保護デバイスの包括的なポートフォリオにより、広範な設計を十分に実現できることに加え、当社は、開発段階のスピードアップし、新製品の市場投入までの時間を短縮できる、広範なハードウェアおよびソフトウェアの評価・開発ツールで技術者を支援します。

 

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