9月 19, 2023

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衝撃吸収構造、エアバッグ、ブレーキ、タイヤなど自動車技術の絶え間ない進歩によって車両の安全性が向上していますが、路上には依然として危険が存在します。この危険も一定したものではありません。低照度などの走行条件では、道路の危険性が大幅に増大します。これらの条件がドライバーに困難をもたらすのと同じように、車両の先進運転支援システム(ADAS)内のセンサにとっても試練です。夜間や低照度の厳しい環境では、安全性確保のために高性能の車載用センサが必要になります。

道路は低照度のとき危険性が高くなることは言うまでもありません。米国道路安全保険協会(IIHS)の調査によると、米国では2021年の交通死亡事故のうち54%が、道路を走行する車が少ない時間帯にもかかわらず、午後6時から午前6時までの低照度時に発生したことが判明しています。同様に、その後の米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の発表によると、歩行者の死亡事故の70%以上が夜間に発生しています。

低照度での走行で危険性が高くなる主な要因の1つは、人間の視力の限界です。ドライバーは、暗い状況では手遅れになるまで危険を察知できない場合が多く、まったく気づかないこともあります。対向車のヘッドライトは、ドライバーの目を眩ませて問題を悪化させるだけです。その上、ドライバーの居眠りや飲酒運転などの要因が加わると、危険性がさらに高くなります。このような状況において、ADAS機能が事故の減少に役立ち、その基礎となるセンサの性能は私たちの安全にとって最も重要です。

 

低照度性能

オンセミ(onsemi)では、車載アプリケーションの複雑さを理解することがAR0220ATを開発する原動力になりました。この1.7メガピクセル(MP)センサは、ADAS機能専用にゼロから構築されたものです。このセンサの性能に欠かせない要素は、より大きな4.2 µmピクセル設計による先進的なデュアル変換ゲイン(DCG)です。多くの競合センサメーカーは、大小のフォトダイオードを使用するスプリットピクセル設計を導入していますが、飽和問題が発生しやすく、低照度下で不要なアーチファクトが生じる可能性があります。

DCG技術では大きなピクセルサイズを使用しており、センサはシーンのダイナミックレンジに基づき、ピクセルの変換ゲインを動的に変更して、応答を変化させることができます。この技術により、高ダイナミックレンジ(HDR)環境でも正確な画像が得られるだけでなく、車のヘッドライトやブレーキライトなどのパルス光源からのフリッカ(ちらつき)の影響を低減できます。

夜間シーンでは、画像ノイズやアーチファクトがあると、道路上の危険物が見えにくくなったり、それ自体が誤って危険物と解釈されたりする可能性があります。AR0220ATの高感度で低ノイズの画像では、最も暗い状況でも前方の道路を正確に表現します(図1)。

競合他社のセンサ(左)とオンセミのART0220AT(右)の比較。
図1:競合他社のセンサ(左)とオンセミのART0220AT(右)の比較。

左側の画像には低照度性能の低下とアーチファクトが生じていることに 注目してください。

日の出や日の入りのような、周囲は暗いのに太陽からの明るいスポット光がある一般的に困難なシーンでは、AR0220ATは、最大140 dBのHDRにより、画像のすべての要素を忠実に捕捉し、競合他社のソリューションに比べて白飛びや露光不足の画像を減らすことができます。

競合他社品(左)とオンセミの製品(右)のS/N比性能の比較
図2:競合他社品(左)とオンセミの製品(右)のS/N比性能の比較


その他の設計に関する考慮事項

センサによって実現する安全性と、センサ技術を効果的に導入しようとしている自動車メーカーの両方にとって重要な補足的な要素があります。AR0220ATは、オンセミで初めて自動車安全水準(ASIL) Bの要件に完全に準拠したイメージセンサです。このセンサは組み込みハードウェア機構を使用して、すべての画像をリアルタイムで監視し、すべてのフレームに「良好」または「欠陥の可能性あり」のどちらかのタグを付けます。これによって、ADASコントローラは各フレームが正確であることを絶対的に確信でき、不正な画像による不要な車両への介入を防止するため、システムは適正な措置を取ることができます。

 

オンセミにとっては、統合型ボールグリッドアレイ(iBGA)パッケージが論理的な選択でした。iBGAでは、多くの競合ソリューションが使用しているチップスケールパッケージ(CSP)に比べて、熱的安定性を高めながらコンパクトな設計が可能になります。CSPでの設計とは異なり、iBGAは、多くの車載アプリケーションで見られる過酷な高温での反りの影響を受けません。AR0220ATの最適設計により、動作時の消費電力も269 mWまで減少しています。これによって動作時の温度が低下し、センサのノイズ量が減少するため、低照度性能が向上します。

オンセミの製品(右)と比較して競合他社品(左)では角度性能に起因する色抜けが発生
図3:オンセミの製品(右)と比較して競合他社品(左)では角度性能に起因する色抜けが発生


まとめ


車載用イメージセンサでは、信頼性と画質が極めて重要です。道路の状況にかかわらず安全性を確保するために、広範な条件下での性能が求められます。このような要求に適合するカメラシステムを設計する場合、考慮すべき特性が数多くありますが、おそらく何よりも重要なのはセンサのダイナミックレンジと低照度性能です。メーカーは、AR0220ATの高性能と組み込みの容易さを活かして、ADASシステムで高いレベルの安全性と自律性を実現することができます。