移動式の農業機械/農業用車両は、耕作や収穫など他の農作業に使用される機械です。小型の携帯用機械および動力工具からトラクタおよび収穫機、そして牽引機や作業機まで、複数の種類の機械があります。異なる機械が有機および非有機農業に利用されています。農業が機械化されて以降、農業機械は大規模な食糧生産に欠かせなくなっており、今後も同じです。
農業用車両の市場規模は?
2019年の世界の農業機械市場は1,470 億米ドルで、トラクタが市場の50%以上を占めています。農産物の高い需要と発展途上国における農業の機械化の進展が、この業界の成長の原動力となっています。アジア太平洋地域は、特にインドと中国およびそれに続く欧州および北米の人口増加により、予測期間全体で急成長が期待されています。中国とインドは、全国で販売されるトラクタの数でリードしています。中国では、全農作業の約60%が機械化されています。2017年のインドの農業の機械化は、40~45%と記録されています。インド政府は、機械化の利用を増やすために、さまざまな機械に補助金を提供し、フロントエンドの代理店を介した大量購入をサポートすることにより、 バランスの取れた農業の機械化を推進しており、予測期間中、トラクタ市場の拡大につながると期待されています。農業の労務費は、国の総人口に占める農業従事者と直接関係しており、単純な需要供給の経済を考えると、農業用トラクタ市場へ影響を与えます。
このセグメントにおける新たな技術および傾向は?
図1 農業用車両業界におけるメガトレンド
電動式の農業用車両は、乗用車と同じ世代に生まれましたが、農業用車両は、まだ自動化、電動化、およびデジタル化されていません。これは、自動化における技術不足が主な原因ですが、急速に変化しています。欧州連合だけも1億トンを超える温室効果ガスが排出されていますが、最大の原因はNRMM(非道路移動機械)車両です。そこで政府は、汚染および騒音防止のための厳しい規制を強力に推し進めています。また、熟練労働者の不足により、生産性と効率性の向上と併せて、オペレータの安全性と快適性に対する要求も高まっています。電動化は、このような要求および要件に対応する最も実現性のある戦略の1つであることが証明されつつあります。農業用トラクタ(AT)は、精密農業および自動走行とともに、電動化という同じメガトレンドが生じているNRMMの主なサブセグメントの1つです。
このセグメントにとって電動化が意味することは?
電動化は、精密農業と自動走行を組み合わせることで、下記に示すいくつかの恩恵を農家にもたらします。
- 種子および肥料のコストの最大20%削減
- 燃料コストの最大90%削減
- 一定の走行および作業プロセスの高速化による生産性向上
- 人件費の削減
- 作業者の安全性と快適性の向上
トポロジおよびアーキテクチャの例
マイルドハイブリッド、およびハイブリッド電動トラクタには、推進装置と遊星ギヤボックス向けの電力供給の構成に基づいて、主に4つのトポロジがあります。電気モータは、内燃エンジン(ICE)とともに動作して車両の燃費を向上させ、ICEと直列でバッテリパックに充電します。完全バッテリ駆動式のトラクタの場合、電気モータにより遊星装置と推進システムを協働して、または独立に駆動します。
図2 ハイブリッドおよびフル電動トラクタのトポロジ
ここで、フル電動バッテリ駆動式トラクタのトポロジを詳しく見てみましょう。このトポロジでは、電気機械が唯一の動力源であり、トラクション用のパワートレインと、補助装置と油圧装置の遊星ギヤボックスを(協働して、または独立して)駆動します。
オン・セミコンダクターは、農業用車両のあらゆるレベルの電動化のために、さまざまなソリューションを提供しています。マイルドハイブリッド48 Vアーキテクチャ用の車載認定済み電流センスアンプ(CSA)、MOSFET 、およびゲートドライバ にいたるソリューションがあります。車載用パワーモジュール(APM) ファミリーを使用することにより、48 Vおよび高電圧アプリケーション、たとえば48 V BSG/ISG、モータ制御、48V-12V DC-DCコンバータ、オンボード充電器、およびHVAC用の高電圧 E-コンプレッサを実現でき、その際、インテリジェント・パワー・モジュール(IPM)も使用できます。また、VE-Trac™ DualおよびVE-Trac Directは、革新的なモジュールソリューションで、高電力密度のスケーラブルなインバータソリューションの設計課題にも対処します。
典型的な電力需要は、65 kW~250 kWであり、トラクタにより実行されるさまざまなタスクを考慮すると、非常に範囲が広くなっています。プラットフォームのアプローチを考慮すると、スケーラビリティは1つの大きなメリットです。また、典型的な農業用トラクタのミッションの特性により、拡張性および小型構造設計を犠牲にすることなく、高い信頼性、堅牢性、長寿命が求められます。これらを考慮し、オン・セミコンダクターのトラクション・インバータ・モジュールであるVE-Tracファミリーは、このセグメントにおいて最も厳しい技術的ニーズのすべてに対応できます。特に、VE-Trac Dualファミリーは、拡張性、長寿命、信頼性の確保に最適です。すべてのソリューションは、成熟した最先端のFS4 750 V Narrow Mesa IGBT技術と、トランスファーモールドパッケージのハーフブリッジ(積載可能)構成をベースにしており、AQG324認定済みで、175oC Tj_max 連続運用でテストされています。VE-Trac Dualは、スマートオンチップ電流センサと温度センサを搭載し、ゲル充填モジュールと比較して伝導損失とスイッチング損失が低く、信頼性が高い(最大3倍の寿命)ことから、インバータの効率と信頼性を向上させ、農業用トラクタのミッション特性に求められる性能と長寿命の要求に対応できます。
CAV(コネクテッド自律走行車)の設計においてOEMが直面する主な技術的課題は?
CAV市場でOEMが直面する主な技術的課題には以下の点が挙げられます。
- 高いエネルギー密度の電源を搭載し、同時に構造的な整合性および全体的なシステムコストを維持すること
- 効率性:エンド顧客が総所有コスト(TCO)を低く抑えるためにダウンタイムを最小限に抑えることが必須
- 使用する部品の長寿命化:当該車両は、通常20年間使用されるため。
- 堅牢性:ミッション特性は主にオフロードであり、一般的な乗用車と比較して、振動と温度レベルが高い環境で使用されるため
オン・セミコンダクターのVE-TracおよびSiCソリューションは、CAVの厳しいミッション特性に基づく要件に関して、すべてを満たしています。
図3 VE-Trac™ Dual の拡大されたライフタイム
NVG800A75L4DSCは、VE-Trac Dual シリーズの一製品で、最大電圧750V、定格電流800Aのアプリケーション向けに有効です。さらに、オン・セミコンダクターは、内部ガルバニック絶縁を備えた、車載用の絶縁型高電流・高性能IGBTゲートドライバ 、車載認定済みの通信、電力管理、信号処理およびコンディショニングの各ソリューションにより、トラクション・インバータ設計のための完全なエコシステムを提供します。
また、迅速なプロトタイピングと評価のために、NVG800A75L4DSC-EVK キットの使用を強く推奨しています。
オン・セミコンダクターは、その革新的なソリューションにより、xEVトラクタの開発の各段階で、農業用トラクタの電動化の課題に取り組んでいきます。
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