10月 17, 2023

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自動車業界がサステナビリティに向かって進化を続ける中、マイルドハイブリッド電気自動車(MHEV)は、環境への責務と財務的実用性の間でバランスを保っています。MHEVは燃費効率を向上させ、排ガスを削減する一方で、慣れ親しんだ運転体験を維持するため、自動車所有者にとって魅力的な選択肢となっています。大手自動車メーカーは、より厳しい排ガス基準を満たすためにMHEVを導入しました。内燃エンジン(ICE)と電気モータの動力を組み合わせることで、MHEVは完全電動化に向けて実用的な移行を実現します。

自動車に付加される電装品や電子部品が増加するにつれ、12Vシステムは限界に近づいています。業界は、48Vバッテリを搭載した電気システムの改良版を開発することによって対応してきました。多くの自動車メーカーが、48V MHEVの新モデルを発表したり、既存モデルを48Vシステムにアップグレードしたりしています。

市場が48Vシステムを目指す傾向にあるので、従来の鉛蓄電池は新しいリチウムイオン電池に置き換わることになります。新しいバッテリは、車両の寿命に耐え、電気システムの性能を向上させることが期待されています。この低電圧アーキテクチャの改善に加えて、システムの小型化および軽量化のメリットが追加されます。

48Vシステムでは、電力が12Vよりも大幅に向上しています。標準的な12Vシステムは出力が最大2~4kWですが、48Vシステムでは最大10~20kWの出力が可能です。電圧が高いほど、ポンプ、コンプレッサ、ターボ、サスペンションコンポーネントなど、酷使に耐えるデバイスを適切に動作させることができます。12Vシステムは車内のレガシー電子機器や制御モジュールへの電力供給のために車内に残る可能性もありますが、12Vシステムと48VシステムをつなぐDC-DCコンバータのおかげで、48Vバッテリから電力を取得することになるでしょう。


MHEV内部の48Vおよび12Vシステムの簡略ブロック図


MHEVは、電気モータを一体化して瞬時にトルクブーストを提供し、スムーズで迅速なエンジン再始動を行うことで、自動車のアイドリングストップシステムの有効性を高めています。ICEとのシームレスな統合により、再始動時に電力や快適性が目立って妨害されることはありません。

48Vシステムの基幹的な電子ユニットは、モータ/スタータジェネレータを作動させる三相インバータと、48Vから12VへのDC-DCコンバータです。ベルトスタータジェネレータ(BSG)と統合スタータジェネレータ(ISG)は、スタータモータとジェネレータの両方の機能を備え、2つの目的を持つ重要なコンポーネントです。

BSGとISGは両方ともMHEVでは同様な機能を実行しますが、主な違いは物理的な配置、エンジンへの接続、車両内での一体化です。BSGは通常、外部に取り付けられ、ベルトドライブシステムを介して接続されるため、既存の車両の改造に適しています。一方、ISGはコンパクトでエンジンと一体化されているため、レスポンスが速く、効率が向上します。P0~P4は現在指定されているポジションと呼称で、それぞれシステムの能力と設計上の課題が異なるレベルとなっています。パワー出力、パワートレインへの結合方法、BSG/ISGの関連機能は、P0~P4の位置で同一ではありません。これにより、OEMは、異なるコストや性能上のメリットを考慮して、さまざまな度合いでISGを柔軟に統合することができます。


P0~P4は、ドライブトレインに対する電気モータの位置

加速中やパワーを追加する必要がある場合、BSG/ISGはICEに電気的なブーストを与えることができます。この電動アシストにより、エンジンへの負荷が軽減され、燃料効率が向上し、排出ガスが削減されます。車両の走行中は、BSG/ISGは発電機として動作します。減速、またはブレーキ時の運動エネルギーを回収し、電気エネルギーに変換します。電圧レベルが12Vの4倍高いため、48Vジェネレータはより多くの運動エネルギーを回生でき、エネルギーを必要とするシステムに電力を供給したり、車両のバッテリを再充電するのに使用できます。

オンセミ(onsemi)は、最新の APM21車載用パワーモジュール(APM)をリリースし、既存の48Vシステム用 APM12、 APM17モジュールの既存のカバー範囲を強化しました。新しい NXV10V160ST1(APM21)は、6個の100V MOSFETを集積し、48 Vインバータ、Eコンプレッサ、その他の補助機器などの一般的なアプリケーション向けの3相に対応できます。NXV08B800DT1はAPM17モジュールの1つで、2チャネルバックツーバック48Vバッテリスイッチ用に設計されています。

APM17モジュールはほとんどがデュアル・ハーフブリッジとして構成されており、PCB上で簡単に接続して、相電流の2倍に適した単一のハーフブリッジを形成できます。3つのモジュールは、3相モータまたは6相モータを駆動するように構成できます。APMは、MOSFETあたり0.58 mΩという低いRDS(on) 定格と、接合部からケースまでの熱抵抗Rth(j-c) 0.19 K/Wを達成しています。オンセミは、ISG/BSG、48V-12V DC-DCコンバータ、メインまたは負荷バッテリスイッチ(機械式リレーの代替)、低電圧トラクション電源および48V補助負荷への電力供給など、多くの48Vアプリケーション向けコンポーネントを提供しています。

3つのAPM17モジュールを使用した25kW BSG/ISGのリファレンス設計


APM には以下のメリットもあります。

  • 高集積かつコンパクトな設計(モジュール内のスナバ、温度検知)により、低い浮遊インダクタンスと電磁干渉(EMI)を実現
  • プリント基板に大電流経路なしで、効率的な大電流処理が可能
  • さまざまなRDS(on)定格でエンドユーザの電流要件への適合が可能であり、また多様なピン配置オプションにより異なるシステム設計に対応
  • トランスファモールドボディは、集積化され電気的に絶縁されたダイレクトボンド銅(DBC)セラミック基板を内蔵し、優れた信頼性と高い熱性能を実現しており、ヒートシンクへのボルト締めまたは固定アセンブリに最適
  • 電源リードはアセンブリのバスバー構造への溶接に適しており、DCリンク入力フィルタへの低インダクタンス接続を実現

 

48Vシステムは以前からMHEVに利用されてきましたが、従来の12Vシステムを置き換えることは、自動車業界にとって大きな前進です。48Vシステムの多くのメリットを認識する自動車メーカが増えるにつれ、自動車メーカーがやがてレガシーとなるシステムをアップグレードするソリューションを模索することが予想されます。

48VシステムはICEや機械的ストレスがかかる部品に隣接して組み込まれるため、可能な限りコンパクトかつ堅牢でなければなりません。ICEに隣接するパワーエレクトロニクスでは、放熱が非常に重要です。オンセミのAPMは、このような必要性を念頭に置いて設計されおり、車載アプリケーションに対応できる堅牢なパッケージに集積されています。

参考資料

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