1月 25, 2022

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10年ほど前に多くの人がつけていた補聴器を思い出してみると、大きくて邪魔で、ユーザは常に補聴器に手をかけ、電池を交換し、それでも言葉が聞こえないという不満を抱いていたのではないでしょうか。

しかし、比較的短期間のあいだに技術の進歩により、これらの機器は不満の種から、最新のIoTベースのエコシステムに接続される高度なオーディオ機器となり、優れたオーディオ性能だけでなく、ユーザにさまざまなメリットを提供することができるようになりました。


 

最初の進化は、周波数ベースの非線形増幅の実装でした。これは、各周波数帯が、そのこに含まれるエネルギーのレベルに基づいて増幅されるものです。その結果、大きな音は減衰し、小さな音は増幅され、補聴器ユーザの体験を著しく向上させることができます。

この進歩は、主にデジタル信号処理(DSP)の登場によってもたらされました。DSPは、異なる周波数にカスタマイズされた増幅を適用する粒度を補聴器に与え、特に時間の経過とともに低下する聴力に合わせ、補聴器を調整し最適化することを可能にしたのです。DSPでは、周波数を分離する高度に選択的なデジタルフィルタを使って、音声信号を全く新しい方法で操作でき、その結果、処理する音の種類を特定することができるようになりました。

また、DSPによって補聴器の知能が向上し、環境に適応することができるようになりました。例えば、補聴器は、装用者が人ごみや移動中の車、広い公共の場など、騒がしい環境にいることを推測できるようになりました。補聴器は、デジタルフィルタをリアルタイムで制御し、適応させるアルゴリズムに基づいて、オーディオ環境に応じて再構成され、それによって、あらゆるシナリオで最高のオーディオ体験を提供できます。

Bluetooth® Low Energy接続によるパーソナルエリアネットワーキングのような無線通信も、補聴器技術にプラスの影響を与えました。最新のコネクテッド補聴器はスマートフォンのアプリでコントロールでき、電話やビデオ通話、スマートフォンやタブレット、音声アシスタントなどのBluetooth LE対応デバイスの音声を聞くことができるようになりました。

人工知能(AI)や機械学習などの技術が補聴器に搭載され、補聴器の機能や性能をさらに向上させ始めています。この技術は、これまで以上に大きなインパクトを与えるだろうと多くの人が期待しています。

未来に目を向けると、人間の耳は相当数のセンシングの機会を提供しています。近い将来、多くの補聴器に、心拍数モニタ、血中酸素濃度、グルコース測定、転倒検知などの医療用センサが搭載されるでしょう。さらに、同じセンサが、歩数カウントなど民生向けの健康機能にも使われる可能性があります。

補聴器がパーソナルデバイスからのストリーミングオーディオなど、より付加価値の高い機能を提供するにつれ、ヒアラブルと呼ばれる新しい製品群(処方箋不要の補聴器、イヤホンなど)との差別化がますます薄れてきました。

ヒアラブル技術は、ライブ翻訳、口述筆記、ナビゲーションサービスなど、多くの収益源の可能性を広げるものです。実際に、Bluetooth LE接続で音声配信が可能なものであれば、最新の補聴器を含むヒアラブルソリューションを通じて(定額制で)提供できるでしょう。

 

テクノロジーが進歩を促進

ここ数十年の半導体製造技術の飛躍的な進歩、そしてDSPやBluetooth LE技術などの大きな進歩がなければ、現代の補聴器は存在し得なかったでしょう。

プロセッサの進化は、一般的に集積されたトランジスタの数によって把握されます。最初のパーソナルコンピュータ(PC)用プロセッサは、数ミクロン単位の半導体プロセスで作られた数万個のトランジスタを搭載していました。現在では、その数千分の一の大きさの半導体チップに、数百億個のトランジスタが集積されています。

このような集積度の高さは、PC業界だけでなく、半導体業界全体がこの進化し続ける技術にアクセスできるため、あらゆる垂直市場のメーカーが飛躍的な進歩を遂げることができるのです。

特に補聴器市場では、処理能力を飛躍的に高め、クロックサイクルを最小化し、消費電力を劇的に削減するマルチコア並列処理アーキテクチャの恩恵を受けています。このようなコアは、AIを含む高度なアルゴリズムを処理できます。


Ezario 8300システムブロック図

 

オンセミのDSPベースのオーディオプロセッサ・ソリューションであるEZAIRO®ファミリの最新デバイスにより、多くの最新オーディオ製品がその恩恵を受けることができます。Ezairo 8300は、補聴器やヒアラブルに特化して設計・開発されており、このアプリケーション分野での性能にそれぞれ最適化された6つのプロセッシングコアを搭載しています。これには、3つのDSPコア、マイクロコントローラ、2つのハードウェアアクセラレータが含まれ、そのうち1つは、AIおよび機械学習機能をエネルギー効率の高い方法で、追加のプロセッサ機能を必要とせずに実行するように設計されたニューラル・ネットワーク・アクセラレータです。

先進のオーディオプロセッサ「Ezairo 8300」の詳細はこちらのリンク先をご参照ください。