11月 12, 2019

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わずか数年前、業界アナリストが500億個を超えるIoTデバイスがネット接続されると予測し始めたときは、ありそうもない話と思われたかもしれません。しかし、Wi-Fi Allianceによると、Wi-Fi技術の登場からわずか20年しか経っていない現在、300億個以上のWi-Fi対応デバイスが使用されています。この流れを見ると、Wi-Fi対応IoTが数百億個の接続デバイスへ拡大する可能性は高そうです。

もちろん、Wi-FiはIoTデバイスで使用される唯一の無線技術ではありませんし、多くのデバイスは今でも有線通信を使用しています。しかし、Wi-Fiは、この20年で急速に進化し、新たな需要に対して適応し続けています。おそらく、明確でないのは、業界がWi-Fiを無線通信アプリケーション以外に何に使用しているかです。たとえば、Wi-Fi信号は、一般にAmbient Backscatterと呼ばれている方法を使用することで、データだけでなく電力を転送できることが研究で照明されています。しかし、おそらく、より具体的な形で表れているのは、Wi-Fiが動体検知および検出技術として既に使用されていることです。

Wi-Fiを用いた動体検知

方法論に入る前に、Wi-Fiを動体検知ソリューションとして検討すべき理由を探ってみましょう。まず、既に述べたように、現在、Wi-Fiは、実質的にあらゆる場所で使用されており、インフラは既に私たちの周りに存在します。次に、IoTは、動体検知など、より役に立つ方法でデータを使用できる完璧なエコシステムを備えています。この2つを合わせると、Wi-Fiを用いた動体検知は、新規および既存のユースケースに適用できます。たとえば、住居の内部および周辺の侵入者を検出する従来型の監視、および定期メンテナンスです。これは、動作および所在の検出機能をHVACおよび照明制御のビル管理システムの一部として使用することにより、スマートビルへ簡単に拡張できます。おそらく、より影響が大きいのは、自宅に居る高齢者および弱者の見張りに使用することで安心を得られることです。

Wi-Fiベースの動体検知の性能を示す最も重要な指標は、特に、正確性、精度、および遅延において、他の動体検知の方法と同じです。正確性は、人の動作または存在を検出する際にシステムによる誤検出の数を最小限に抑えることを意味します。そのために、監視対象の住居、ビル、その他のエリア全体をWi-Fiでカバーする必要があります。精度は、速度および方向を含め、検出する動作の種類をシステムが区別できることを意味します。これは、たとえばシステムを使用して高齢者や弱者の転倒を検出する場合に重要です。遅延は、一般的に理解されているように、動体検知から事象報告までの時間の遅延です。どの動体検知ソリューションであっても、これは分単位ではなくミリ秒単位で計測する必要があります。

既存のハードウェアへの構築

基本的に、無線周波数(RF)を用いた物体や人間の検出は、信号を送信する送信機と、信号を受信して特徴付ける受信機に依存しています。有機物であれ無生物であれ、あらゆる物体は、媒体またはチャネルを通る信号の特徴に影響を与えます。この方法により、チャネル自体を特徴付けることが可能であり、その際にチャネルの変化を検出できます。

このアプローチが明らかに意味するのは、チャネル内の物体を正確に特定できなくでも、物体または人物が存在すること自体は検出できるということです。チャネルを通るRFのエネルギーの吸収または反射により、送信機と受信機の間の信号において計測可能な差異が発生します。重要なことは、この計測可能な差異を実用的なデータへ変換することであり、ここでカギとなるのがWi-Fiで使用されている基本的なプロトコルです。

典型的な住宅またはビジネス環境では、無線ルーターまたはアクセスポイント(AP)には、それに対応するデバイスが存在します。Wi-Fiプロトコルでは、APが各接続デバイスとの通信方法を最適化できるフィードバックを通して、接続デバイスがAPに応答する必要があります。このフィードバックの一部には、チャネル状態情報(Channel State Information, CSI)と呼ばれるデータが含まれています。APは、CSIに含まれている情報を使用して、その環境を把握できます。


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図1: CSIデータは無線の状態を知るために使用可能

APが無線環境の「様子」を知ることができれば、状況の変化を特定することは比較的簡単です。RFのエネルギーの吸収または反射の作用と、環境内で動いたり動かされている物体を関連付けるのは、このような変化です。ここに潜在性があるのは、接続デバイスがアプリケーション内での自己の役割を基本的に意識しないことであり、これはWi-Fiベースの動作検知の拡張性がAP内の技術に全面的に依存することを意味します。


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図2: CSIデータを用いた環境の特定

また、CSIから抽出したデータをエッジ上またはクラウド内の信頼できるサードパーティ・アプリケーションへ渡し、データを処理して動きをインテリジェントに検知することも可能です。オン・セミコンダクターのいくつかのパートナー企業は、これを既に行っており、AIを使用してCSIの生データを分析し、動体検知をサービスとして提供しています。これにより、たとえば誰かが床に転んだ際や、予想以上の人数がビル内にいる際に検出するなど、高度な機能を実現できます。

より高性能のWi-Fiによる動体検知の向上

Wi-Fiを用いた動体検知の性能は、Wi-Fiカバレッジの品質に大きく依存しており、より品質の高いシステムを使用することで、正確性、精度、および遅延に関わるパラメータを改善できます。おそらく誰もが知っているように、Wi-Fiの性能を低下させる要因はたくさんあり、業界は、改善に向けて常に努力しています。ここで大きな効果を発揮するのがMIMO(複数の入出力)技術です。MIMOとMU-MIMO(マルチユーザーMIMO)は、複数のアンテナを使用し、環境内のWi-Fi電波の多重反射の利点を活かして、複数のデータストリームを複数のクライアントと同時にやり取りします。また、MIMOは、ビームフォーミング技術を使用して、Wi-Fiネットワークの到達範囲を広げ、性能を向上させます。さらに、マルチパスのCSIデータに含まれている情報は、8ビットから12ビットまたは16ビットのCSIデータへ移行することにより、動体検知の解像度を向上させます。


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図3:マルチパスの図

Wi-Fiの進化により、使用されるチャネルの帯域幅が漸進的および持続的に拡大しています。この利点は動体検知の面で重要です。というのは、40MHzから80MHzチャネルの帯域幅に移行することにより、動体検知の正確性が40%向上するからです。この正確性の向上は、先に述べたように、付加価値サービスをサポートするために使用されています。

Wi-Fiを用いた動体検知は、用途の広いこの技術が進化を続け、重要な新サービスの提供に使用されている最新の事例です。当社のMU-MIMO 技術の開発が進めば、メーカーは、Wi-Fiの潜在性をさらに活用できるようになるでしょう。

詳しくは、オン・セミコンダクターのWi-Fiソリューションをご覧ください。