8月 05, 2020

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多くの小型でポータブルなモノのインターネット (IoT)アプリケーションにとっての「究極の目標」は、最長10年間のバッテリー寿命のコイン電池を用いたワイヤレス接続です。しかし、これは簡単にできることではありません。ほとんどの安価なコイン電池の最大容量は、わずか240 mAhだからです。スリープモードで低消費電力の無線SoCを選ぶことで、長距離および短距離のワイヤレス接続において、10 年の寿命が達成可能となるでしょう。

240 mAhほどの低容量のコイン電池で10年間のバッテリー寿命を達成するために、ワイヤレスデバイスは、下記の図1が示すように、通常はほとんどの時間をスリープ状態で費やし、時々ウェイクアップしてワイヤレス送信を実行します。たとえば、5秒間の送信間隔(毎時120回のワイヤレス送信)に対して7ミリ秒のウェイク時間の場合、デューティサイクルは、ウェイクアップ時間0.14%、スリープ時間99.86%です。コイン電池で10年間のバッテリー寿命を達成するために、ディープスリープモードの低消費電力が不可欠なのはそのためです。


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図1 スリープ時間とウェイク時間のデューティサイクル

 

10年間のバッテリー寿命を達成するために、送信(Tx)および受信(Rx)電力に応じて、通常30~50メートルの中短距離ワイヤレス接続には、Bluetooth Low Energyが望ましい選択肢です。1000メートルを超える長距離の場合は、Sub-Gigahertz(サブギガヘルツ)のソフトウェア無線(SDR)が理想的です。

 

Bluetooth® Low Energy

アドバタイジング

Bluetooth Low Energyは、2.4 GHz ISM 帯域で、2 MHz間隔の40チャネルのパーティションを使用して動作します。3つのRFチャネル(37、38、および39)は、アドバタイジング機能専用で、これにより近くで利用可能なデバイスを検出できます。チャネル 0~36は、データ専用です。アドバタイジングチャネル(図2)は、802.11/Wi-Fiからの干渉を防ぐために周波数帯域の異なる部分に割り当てられています。


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図2 Bluetooth Low Energyアドバタイジングチャネル(Source Accton Marketing)

 

アドバタイジングパケット

PDU(Protocol Data Unit、プロトコルデータユニット)と呼ばれるアドバタイズメントパケットのデータユニットは、最大37バイト(アドバタイズメントアドレスに6バイト、データに最大31バイト)のデータペイロードのタイプと長さを示す2バイトのヘッダを備えています。


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図3 Bluetooth Low Energyアドバタイジングパケット(Source Accton Marketing)

 

コネクタブルvsノンコネクタブル

Bluetooth Low Energyアドバタイズメントパケットは、「コネクタブル」または「ノンコネクタブル」のいずれかになり得ます。図4は、RSL10システムインパッケージ(RSL10 SIP) Bluetooth Low Energyモジュールにおいて、0 dbmの送信電力で「コネクタブル」(左)および「ノンコネクタブル」(右)の「3アドバタイズメント」イベントでパワーアナライザによりキャプチャされた状態を示しています。いずれのイベントもチャネル 37、38、および39、および最後の7ミリ秒を使用していますが、「コネクタブル」イベントには各チャネルに対するRXパルスが含まれています。「コネクタブル」イベントでも受信を実行したいため、これは理にかなっています。パワーアナライザの測定の結果として、「コネクタブル」の場合は711.624uA 、「ノンコネクタブル」の場合は504.307uA の平均電流が示されています。一方、RSL10 SIPのディープスリープモードの電流は、Bluetooth Low Energyスタックの16 kbB RAMリテンションの場合160 nA であり、内部タイマーを実行して自らをウェイクアップします。


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図4 「コネクタブル」vs「ノンコネクタブル」アドバタイズメントパケット

 

RSL10 SIPバッテリー寿命5バイト)

上記の条件を考慮すると、図5はRSL10 SIPの実際のバッテリー寿命が10.97 年(2.5秒のアドバタイズメント間隔、コネクタブル)~ 27.26 年(5秒のアドバタイズメント間隔、ノンコネクタブル)であることを示しています。これらの計算値は、240 mA CR2032 コイン電池の使用と5バイトのデータ転送(PDU)の条件に基づいています。


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図5 RSL10 SIP の実際のバッテリー寿命

 

理想的なバッテリー寿命vs 実際のバッテリー寿命

リチウムイオン・コイン電池には、特定の負荷における連続放電特性をプロットしたデータシートが付属しています。図6 に示したCR2032 バッテリーの例の場合、プロットは定電流19 0uA 負荷における放電曲線を示しています。図5 に示されたRSL10 SIPの 平均電流は865 nA ~1.57 uA であり、190 uA 曲線よりもはるかに少なくなっています。

 

「理想的なVBAT」を計算する場合、クーロンカウントは100%(満タン)から0%(空)まで240 mAhであり、これは「Ideal(理想的な)VBAT」と書かれた赤の点線で示されています。コイン電池は、実際に赤の点線のように動作することはありません。「Actual(実際の) VBAT」の放電曲線が赤の点線と青色のCR2032 190uA放電曲線の間にあると分かっているため、緑色の「実際の VBAT」放電曲線に達するために、「理想的なVBAT」を15%引き下げています。


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図6 連続放電特性

 

下の図7は、データサイズを5バイトから31バイトに増やしたときのRSL10 SIP のバッテリー寿命を示しています。


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図7 RSL10 SIPのバッテリー寿命(31バイト)

 

独自のRFプロトコル

独自のサブギガ(Sub-GHz)無線は、より長距離の無線通信用に設計されています。当社のAXM0F24ナローバンド SoCは、リンクバジェット153 db (-135 Rx の感度で16 dbm Tx の出力)で、37km、つまり23マイルの距離を送信できます(915MHz、30dbのフェージングマージン)。1.1 kmの距離の場合、AXM0F243  は望まれる10年の実際のバッテリー寿命を超えます。


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図8 AXM0F243実際のバッテリー寿命

 

適切な無線 SoCを使用すると、短距離および長距離通信で10年間のバッテリー寿命を達成することが完全に可能になります。オン・セミコンダクターのコネクティビティ のソリューションご参照ください。

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