バッテリ電気自動車(BEV)の採用率は着実に増加していますが、以前の予測よりは遅いペースです。これには主に2つの理由があります。第一に、BEVやプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)のコストが、同等の内燃機関車(ICE)に比べて高いことが挙げられます。しかし、テクノロジの進歩とバッテリコストの削減により、BEVとICE車両の所有コストは、早ければ2022年には同等に達するだろうと予測されています。二番目の大きな障害は、しばしば「走行距離の不安」と呼ばれるものです。これは旅行が終了する前に、BEVが電力不足になり、運転者と搭乗者が立ち往生するのではないかという懸念です。その懸念の多くはバッテリ自体の容量に焦点が当てられますが、ここでは適切な充電ポイントの利用可能性とチャージ(充電)に要する時間も重要になります。
バッテリのサイズ(つまり容量)を増やすことは、車の走行距離を延ばす選択肢の一つですが、これは車のコストと重さを犠牲にすることになります(車が重ければ重いほど、より多くのエネルギーを必要とします)。
これはBEV、特に電力の大部分が使用されているパワートレインにおける効率性の決定的重要性を強く表しています。ここでの効率性のわずかな向上により、キロワットの損失を減少し、利用可能なエネルギーで車をさらにさせることができます。
BEV用パワートレインの設計における課題の一つは、トラクションモータがACを必要とするのに対し、バッテリがDCを供給することです。したがって、トラクションインバータは、パワートレインには絶対的に重要な部分です。部品選択が不適切であるか設計が不適切な場合、インバータが非効率か大型(またはその両方)になり、車の走行距離に悪影響をおよぼします。
トラクションインバータはかなり大きな電力量を扱っており、電流数百アンペアで、一般的には450Vで150kW程度です。オン・セミコンダクターは、このような難易度の高い電力システムの設計者を支援するために、このほど、最高クラスの電気的性能と熱性能を実現する新しいVE-Trac™パワーインテグレーテッドモジュール(Power Integrated Module、PIM)を発表し、VE-Trac™デュアルとVE-Trac™ダイレクトという2つのトラクションインバータ設計プラットフォームを実現しました。
VE-Trac Dualは、コンパクトなフットプリント内でスタック(積み重ね)可能でスケーラブルな、デュアル・サイド・クール(Dual Side Cool、DSC)のハーフブリッジ・モジュールで構成され、小さなスペースで80kWから250kWまでのアプリケーション向けのプラットフォームソリューションを提供します。最初に発売されたデバイス(NVG800A75L4DSC)は、定格800Aで750Vと、市場に出回っている他のデバイスの2倍の容量です。非常に効果的な両面冷却により、市場をリードする熱性能が保証され、モジュールにワイヤボンドが存在しないため、定格耐用年数が2倍になります。NVG800A75L4DSCは、スマートIGBTを搭載したAQG-324認証済みモジュールで、組み込まれた過電流保護機能と過熱保護機能に対して、より高速な反応時間を実現し、きわめて堅牢なソリューションを提供します。
VE-Tract Directプラットフォームは、優れた熱性能のための直接冷却などで、クラス最高の性能を提供します。AQG-324認証済みのNVH820S75L4SPBは、自動車メーカやシステムプロバイダに広く採用されている6パック構成で収納されており、レイアウトの変更を最小限に抑えたマルチソーシングが可能です。VE-Tract Directプラットフォームは、複数の電力クラスで利用可能であり、さまざまな車両プラットフォームやアプリケーション向けに、シンプルで迅速なパワースケーリングを可能にします。
VE-Trac DirectとVE-Trac Dualの両プラットフォームはともに、最大175ºCの接合部(ジャンクション)温度で連続的に動作でき、モジュール型ソリューションによるコンパクトなフットプリント内で、より多くの電力を供給できます。
CESの期間中、オン・セミコンダクターのブース(場所: Venetian/Sands Convention Center, Murano 3302)の車両電動化のスペースにおいて、この新製品VE-Tracファミリーのパワーモジュールのデモンストレーションを実施します。
ADASおよび自動運転、IoT、インダストリアル&クラウドパワーなど、CES2020で「予定されているすべてのデモの詳細は、当社のイベントページサイトhttp:www.onsemi.com/ces2020 をご覧ください。